#株式投資ノート

相場に関すること全般

因果関係論と株の世界

カオスという現象とそれに対する心の作用と集団的心理について考察する。

 

ヒュームの因果関係論

人間の知覚(perception、これはヒューム独自の用法であり、心に現れるもの全てを指す)を、印象(impression)と、そこから作り出される観念(idea)の二種類に分ける。印象と観念には、それぞれ単純(simple)なものと複合(complex)なものとがあり、全ての観念は印象から生まれる。そして印象は観念の源泉となるが、観念から印象は生じない。

これらの観念が結合することにより知識が成立され、この結合についてはは二種類の関係が想定される。一つを「自然的関係」、もう一つを「哲学的関係」という。前者は「類似(similarity)」「時空的近接(contiguity)」「因果関係(causality)」であり、後者は量・質・類似・反対および時空・同一性・因果である。

 

因果に関する問題

因果関係の特徴は「でなければならない(must)」という考え、あるいは必然性にある。しかし、原因と結果の間に必然的な結合と言えるような結びつきはなく、事物は我々にそのような印象を与えない。「であるbe」あるいは「起こるoccur」でしかなく、「must」は存在しない。一般に因果関係といわれる二つの出来事のつながりは、ある出来事と別の出来事とが繋がって起こることを人間が繰り返し体験的に理解する中で習慣によって、観察者の中に「因果」が成立しているだけのことであり、この必然性は心の中に存在しているだけの蓋然性でしかなく、過去の現実と未来の出来事の間に必然的な関係はありえず、あくまで人間の側で勝手に作ったものにすぎない。では「原因」と「結果」と言われるものを繋いでいるのは何か。それは、経験に基づいて未来を推測する、という心理的な習慣である。

ヒュームは、それまで無条件に信頼されていた因果律には、心理的な習慣という基盤が存在することは認めたが、それが正しいものであるかは論証できないものであるとした。後世この考えは「懐疑主義的」だと評価されることになった。

 

 

The Zurich Axioms

さて,1985年に出版された書籍を紹介したい。日本ではラリーウィリアムズを機縁として2005年に出版された。副題になっているように「スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール」を学べる本である。敗者のゲームやウォール街のランダムウォーカーは「分散投資インデックス投資」の知恵を記している一方、マネーの公理は「投機」の知恵を記している。インデックス投資は堅実な投資方法,割安株投資をするべき,卵は1つのカゴに盛らない=分散投資 という内容を肯定するような記述は一切出てこない。むしろ、短期・集中・回転・タイミングを重視するような考え方で,分散投資をしてもお金持ちにはなれない,リスクを取らない限りお金持ちにはなれない、投資と投機は同じ意味というメッセージが書かれている。機会損失を重視せず,実損失をいかに避けるかを重視する立場といえる。この本には、賭けて勝つための公理が書いてあります。日本だとあまり「賭ける」という言葉を聞いてポジティブな印象を持つ人はいない,他方で,世界で最も栄えた人々として名高い「スイス人」はリスクを合理的に取り、賭けることで栄えてきた。そのスイス人の築いてきた「お金に関する(マネーの)公理」を12の重要な公理と16の副公理に分けて説明をしている。

 

要約

心配は健康の証であって、病気ではない。
心配がない人は、十分なリスクを取っていない。
常に有意義な勝負をしろ。
分散投資の誘惑に負けるな。
常に早く利食え。
投機からどれだけの利益が欲しいかをあらかじめ決めておき、それを得たら手仕舞え。
小さな損失は人生の現実として受け入れ、大きな利益を待つ間は、経験の積み重ねと思え。
未来を知っているという人を少しも信用するな。
歴史家の罠に気をつけろ。
チャーティストの錯覚に注意しろ。
相関関係と因果関係の妄想に気をつけろ。
ギャンブラーの誤謬に気をつけろ。

直感と希望を混同するな。
船が沈み始めたら、飛び降りろ。
忠誠心やノスタルジアの感情は捨てろ。
より魅力的なものを見つけたら、すぐにそっちに移れ。
動きが鈍くなるので根を下ろすな。
最初からうまくいかなければ、そのアイデアは捨てろ。
説明できる直感は、信頼できる。
多数派の意見は無視しろ。
楽観とは、最善を期待し、悲観とは最悪の事態に自分で対処する方法を知ることだ。
流行を追うな。
誰も欲しがらない時が、何かを買うのに最高のタイミングであることはよくある。
悪い投資をナンピンで何とかしようとするな。
長期投資は避けろ。
長期的な計画は、未来を管理できるという危険な信念を引き起こす。

 

すごいですよね。滋味深いハッとさせられる具体例の数々で,ぜひ要約で済ませず本を読んだ方がいいです。

 

あなたがもし貧乏クラスから這い上がりたいとすれば、その唯一の方法は、リスクを取ることである。投資の本の中では、「無くなっても良いと思える資金まで」で運用するべきと書いてある本もあったりする。しかし、この「マネーの公理」ではそのような行為はお粗末であるとしている。1,000円が10倍になろうが10,000円。10,000円であなたはお金持ちになったと言えないということ。また、分散投資」についてもお金持ちになりたいのであれば必要がないと述べられている。分散投資は、「ある投資対象が上がった時に、他の投資対象が下がる」という仕組みだが,双方にヘッジし合って資産が増えないためだ。手数料も無料ではあり得ない。

 

私たち人間はとっても「強欲」。「あれが欲しい。」「こうなって欲しい。」いつもいろんな欲にまみれて生きている。それをうまく扱えれば良いですが、扱えないのが人間。だからこそ、投機の世界では強欲が利益をなくす要因となる。どうしても、株を買い付けして値上がりすると,もっと上がるかもしれないと思ってしまいがち。これが「強欲」。でもこの「強欲」がすぎるとたちまち利益はなくなってしまう。だからこそ「早すぎるほど」はやく利食う。売った株式の株価が上がっていようが、下がっていようが、常に早すぎるほど早く利食えば、あなたの手元には少なからず「利益」が残る。これが種銭や減資用の資本になる。「上がるかもしれない」という強欲に負けて、少しの利益で満足しなければあなたには「損」が待っている可能性がある。

 

次に「損切り」について重要なのは、沈み始めたら逃げないといけない。「沈んでしまったら」ではなく「沈み始めたら」。つまり、全部沈んでしまう前に逃げなければならないということ。これはなかなか難しい。後悔するかもしれないという恐怖,投資資金の一部を失うこと,自分の間違いを認めるという難しさ という3つの障害が、損切りすることを躊躇させるから。

 

投機をする時に「専門家の予測」を参考にするか?その「予測」が当たったことはあるか?世の中には株式市場の今後の予測や景気の予測など様々な予測がたくさん存在するが、大概は当たっていない。彼らがなんらかのポジションを持っていればポジショントークだし,そうでなければ頓珍漢である。どっちにせよという話である。

 

「銘柄に執着するな」。時々「過去この銘柄でうまくいったから、今回もこの銘柄で勝負する」という人がいるが,その行動には必然性が全くない。「より良いものを見つけたら、今の投資は止める」こと。人間は成功体験に頼りがちなところがありますが、その体験がいつまでも続くわけではない。より良いものを見つけたら、乗り換える機動力を持つ必要がある。そういう自分の都合で乗り換えることで多数の圧力(支配)から自由になれる。

 

投資を行う時の最高なタイミングは誰もそれを望まない時。世の中で話題になっている株やネットなどで注目されている株を、注目されてから買うのはなし。

 

難平買いで悪い投資をなんとかしようとしてはいけない。ただ白鵬の相撲のように懐を深く構えて相手の攻撃をいなす考え方とはよく区別すべき。

 

世の中の投資の本は「投資はできる限り長期投資であまり売買しない方が良い」と主張している本が多い。しかし,本来,投機/投資については長期投資をしないに越したことはない。必要な長期計画はお金持ちになることだけである。これとどこまで引っ張るかについては話は別。

 

現在

前述の通りマネーの公理の原著は1985年。1970年代のインフレの香りの残る記載の数々が今に突き刺さる。