2019年司法試験,ランキングと考察
2020年の司法試験は新型コロナウィルス感染症で実施時期未定となっていますが,本記事では2019司法試験の合格発表を振り返ってみたいと思います。
法務省は9月10日、2019年の司法試験に4466人が受験し、1502人が合格したと発表しました。合格率は34%でした。
最終合格者数は1502人で、2018年の1525人と比べて23人減少。受験者数4466人に対する合格率は34%でした。ちなみに2015年だと合格者は1850人,合格率は20%台前半だったと思います。気になるのはやはり予備試験経由の存在です。
予備試験経由,大学別の合格者数と合格率は下記のようになっています。
※カッコ内は合格者数 合格率の順
1.予備試験合格者(315人、81.8%)
2.京都大法科大学院(126人、62.7%)
3.一橋大法科大学院(67人、59.8%)
4.東京大法科大学院(134人、56.3%)
7.早稲田大法科大学院(106人、42.1%)
8.大阪大法科大学院(46人、41.1%)
9.東北大法科大学院(20人、38.5%)
10.名古屋大法科大学院(25人、37.3%)
11.広島大法科大学院(14人、35.9%)
12.九州大法科大学院(20人、33.9%)
13.神戸大法科大学院(44人、33.8%)
15.中央大法科大学院(109人、28.4%)
17.北海道大法科大学院(25人、24.0%)
18.筑波大法科大学院(18人、23.4%)
19.首都大東京法科大学院(22人、22.9%)
20.大宮法科大学院大学(2人、22.2%), 神奈川大法科大学院(2人、22.2%)
22.信州大法科大学院(3人、21.4%), 中京大法科大学院(3人、21.4%)

25.愛知大法科大学院(2人、20.0%)
27.成蹊大法科大学院(8人、19.5%)
29.福岡大法科大学院(3人、17.6%)
30.関西大法科大学院(12人、17.4%)
31.横浜国立大法科大学院(9人、17.3%)
32.岡山大法科大学院(7人、16.7%)
34.明治大法科大学院(26人、16.0%)
38.日本大法科大学院(14人、14.6%)
39.香川大法科大学院(1人、14.3%) , 金沢大法科大学院(4人、14.3%) , 島根大法科大学院(1人、14.3%) , 南山大法科大学院(4人、14.3%)
45.青山学院大法科大学院(4人、12.1%) , 立教大法科大学院(7人、12.1%)
47.学習院大法科大学院(6人、11.8%), 甲南大法科大学院(4人、11.8%)
49.法政大法科大学院(7人、11.5%), 上智大法科大学院(11人、11.5%)
52.獨協大法科大学院(1人、10%), 明治学院大法科大学院(1人、10%)
54.関東学院大法科大学院(1人、8.3%), 広島修道大法科大学院(1人、8.3%)
59.名城大法科大学院(1人、5.9%)
61.大東文化大法科大学院(1人、3.4%)
62.大阪学院大法科大学院(0人、0%) , 鹿児島大法科大学院(0人、0%), 熊本大法科大学院(0人、0%) , 久留米大法科大学院(0人、0%), 神戸学院大法科大学院(0人、0%), 駒澤大法科大学院(0人、0%), 駿河台大法科大学院(0人、0%), 東北学院大法科大学院(0人、0%), 東洋大法科大学院(0人、0%), 新潟大法科大学院(0人、0%), 白鴎大法科大学院(0人、0%), 北海学園大法科大学院(0人、0%), 龍谷大法科大学院(0人、0%)
「予備試験の合格率がこんなに高いのか」というのが率直な感想です。
予備試験経由の受験者数が385人,合格者数が315人で,合格率が81.8%とのことです。
※手元にある2016年の数字と比較すると,2016年当時は予備試験経由での受験者数は382人,合格者数は235人、合格率61.5%でした。
法科大学院経由の受験者数は4081人,法科大学院経由の合格者数は1187人となり,法科大学院経由での合格率は29.1%となります。
※手元にある2016年の数字だと,当方の試算では法科大学院経由の合格率は20.7%であり,8.4ポイント改善しています。
私が受けていた2009年当時は,予備試験はなく,全体の合格率27.6%だったので,法科大学院経由同士で比較しても当時より今の方がやや合格率が高くなっています。
今はもう,優秀な方は予備試験経由で早く合格する(学部・大学院在学中など),また,社会人で法科大学院に行く余裕のない人が予備試験経由で合格する,という状況が鮮明になっています。とはいえ,予備試験の合格者数はマクロ的観点から法務省サイドでキャップがかけられると思うので,変動要素である予備試験受験者数の増減に応じて予備試験そのものの競争率が変わるものと思います。
したがって,現状は,予備試験経由の合格率の高さは,予備試験そのものが競争が激しい上,そこですでに法律の能力のスクリーニングをしているので実力者が厳選されてきた結果と推察されます。
それにしても法科大学院の存在意義が気になります。学費が年100万円としても,200万円(既習コース)から300万円(未習コース)かかり,その上で生活費が年200万円として400万円から600万円かかるわけで,総額500万円から900万円の投資になります。
これがさらに私立だと上がる可能性があり,また,一度不合格になるとまた何百万円も追加コストがかかるわけです。近年は,大学院別の合格率にも大きな差が生じてきている傾向です。
さらに考えると,学部段階ですでに2000万円程度は投資しているわけです。
教育に金がかかるのはわかりますが,社会保険で一定程度商売のしやすい医師とは異なり,自由競争で社会にでる法曹志望者にとっては苦しい状況と言わざるをえません。