k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

バイアウトファンドからみたM&Aのファイナンス的側面

バイアウトファンドの市場環境,Fund RaisingとReturnの仕組み

バイアウト部門を擁する代表的なバイアウトファンド

Blackstone

世界有数のPEファンド・ブラックストーン(Black Stone)を紐解く | オルタナティブ投資大百科

KKR

http:// https://alternative-asset-management.jp/kkr-fund/#KKR-5

Carlyle

著名PEファンド・カーライルグループ(The Carlyle Group)の実態に迫る | オルタナティブ投資大百科

 

各種ファンドマネーの投資規模

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各種ファンドマネーの投資規模

http://www.bsic.it/the-peak-of-private-equity/

 

ファンドのビジネスモデル

組合(Partnership)を租税回避地に作り,年金等の機関投資家(Limited Partners,LP)から資金を集めてファンド運営者(General Partners,GP)が運用してリターンを出すビジネスです。

通例,LPとの投資枠を確保しておき,具体のMA案件が来て買うことになり,資金が必要な局面で,キャピタルコールで資金を口座に振り込んでもらう,キャピタルコール方式がとられます。

キャピタルコール方式:流動性が低いファンド(プライベートエクイティやインフラファンドなど)において,ファンド組成時に投資対象を一括取得できないことから,投資の進捗状況に応じて,投資家が予め決められた期間内・出資上限の範囲内で,ファンドに対して段階的に資金提供を行うこと

GPの報酬は成功報酬ともいえる「キャリー」と,運営固定費を賄う「管理報酬」です。

キャリー, 管理報酬,リターンの配分についてはこちらに詳しいです。

組合契約における留意点(2)~組合財産の分配~ | AZX Super Highway(AZXブログ)

 

Valuation(倍率法):具体的計算手続,他の手法との比較

EBITDA × EV/EBITDA倍率 が基礎になります。

EBITDAはEarnings Before Interest, Depreciation, and Amortization(金利,税金の各支払い前及び償却前の利益)で,事業活動が生み出すおおよそのキャッシュ金額を表す数字です。M&Aにおいては,買収する側で金利額,支払税金額,償却額をある程度決定できること(ストラクチャーフリー)及びROI(MOIC)の設計はレバレッジの掛け方に依存すること(ストラクチャー依存性)から,金利額,支払税金額,償却額を控除する前段階であるEBITDAを事業本来の価値の基準値とする考え方が広く支持されています。

EV/EBITDA倍率は,マルチプルともいい,類似の上場会社や類似のM&A取引と比較して,ある会社の買収価格評価を行う際に使われる倍率指標で,「企業価値/EBITDA」の値です。時価総額があらかじめFixされている上場会社では,時価総額+NetDebtが企業価値と考えられ,それをEBITDAで割ります。会社の生の状態の資本の回転スピードと捉えることができます。

 

Leverageの概念・機能

よくレバレッジレバレッジと聞きますが,レバレッジ効果とは,借入金をたくさん使うことによって資本投資利回りが向上する効果のことを言います。変動する損益のうち,一部分を支払金利額として固定すると残りの部分の振れはますます大きくなるということです。また,その他の効果として,支払う税金が少なくなるということもあります。機能としては,資本の回転スピードに関する「強化」と捉えることができます。

もしレンダーの金利複利でかつ調達コストがエクイティ資金並みであれば,まったくレバレッジ効果は生じないでしょう。

KKRなどが90年代に開発した手法で,現在膾炙しています。リスクとリターンの適切な切り分けを実現した点が特筆に値します。

レバレッジを掛けない案件は,フルエクイティ(フルエク)と実務ではいいます。

 

ROI(MOIC)とIRR

ROI(MOIC)は,トータルでどのくらい儲かったかを示す指標で,

N年度のExit金額 ÷ 投資金額

で求められます。

例:Equity 100→250

ROI(MOIC)は2.5xですね。 

 個別の案件のIRR計算は,バイアウトファンドではシンプルに以下のようになされます。

(N年度のExit金額 ÷ 投資金額)^{1÷(N – 1)}–1

投資とExitの金額を始まりと終わりに棒グラフで立て,そこを指数関数で回っているように両者の棒のトップ同士をつなげて,それを微分するようなイメージです。ここは本当にイメージのみで恐縮なのですが,距離の離れた棒の頂点同士を直線引いて傾き求めるのとは違って,グググっと一定割合で傾きがきつくなっていく指数関数の曲線を手で描き,その曲線を構成する指数を出すというイメージです。ぱっとn乗根がわかればいいのですが,普通わからないので,年数から何乗かまず決めて,1.1, 1.2, 1.3と任意のaの値を順々に入れていってaを求めていく...というイメージです。エクセルで便利なIRR関数でよいのですが,それだとイメージが全く持てないので,ちょっとこのような説明をここでは試みています。

指数関数y=a^xの微分公式の4通りの証明 | 高校数学の美しい物語

例:Equity 100→250,6年(N=6)

(250 ÷ 100)^{1÷(6–1)}–1=0.2 よってIRR 20%

例:検算

イニシャル投資額*(1+IRR)^(N-1) 

100*1.2^5=250

複利計算なので厳密ではないですが,時間を軸にした速さと距離の関係とイメージしてみてもよいかと思います。ファンド運営は(他の投資機会よりも・確実に)速く遠くに行くゲームです。

→IRRは速さ,ROIは距離 ※全く厳密ではないです

 

Tax Planning

各個別のM&AのTax Planningも重要です。このあたりはその専門性を有する税理士に相談するのが得策です。時価総額をfixした上で,それを譲渡対価名目での現金払いと役員退職慰労金名目(これは損金化できますね)での対象会社自己資金払いにスプリットするのが常套手段です。譲受対価が下がるので売却時にはその下がった分もキャピタルゲインとして評価され譲渡益課税されるのですが,課税繰延の効果ないしはその後の買い手も同じスキームを取るのであれば節税の効果があります。

別の話として,適格再編(合併,事業譲渡等で,対価の額にかかわらず資産の簿価を承継する),非適格再編(承継しないので損益が出る)は必ず意識します。前者が得なこともあるし後者が得なこともあります。

また,のれんの償却に注意です。LBOでSPCと対象会社を合併したときに生じるのれんは,販管費で償却費が5年償却などで計上されますが,これは税務会計上別表で修正され,損金としないことが多いです。

 

基礎的な計算概念

ここで,やはり小学校から高校までの数学はとても役に立ちます。

四則演算

 (株式価値+NetDebt)/EBITDA=Multiple → EBITDA*Multiple-NetDebt=株式価値

分数とルート

 現在価値 単利での逆算と複利での逆算 5分の1 vs. 5乗根(=1/5乗)

指数と対数

 CAGRと割引  2.5≒1.2^5 vs. 5≒log1.22.5 

割戻し

 粗利20%,原価100万円,売価P

 P-P*0.2=100 → 0.8P=100 → P=100/0.8(=125) 

単純平均と加重平均

 60万円のプロダクト(販売数100個)と40万円のプロダクト(同50個)の加重平均単価は53.3万円 

このあたりは,学校の数学を思い出しながらGMATのMathなどで復習すると,とても実務で役に立ちます。↓で確実にMathの満点(51点)は到達します。

インターナショナルマスアカデミー