k's point of view

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憲法問題解析 一定エリアへの自動車での乗入れ規制

地味~だけどいい問題です…

 

 

【問題】

 

交通秩序の維持を理由として都心の一定地域への自動車の乗り入れを許可制とすることは,憲法上どのような問題があるか。デモ行進を,交通秩序維持を理由に事前許可制におくことの合憲性と比較しつつ論じよ。

 

 

【問題の整理】

 

本問は自動車での一定地域の移動の制限を移転の自由の制約と捉え,一方,集会の自由の一形態であるデモ行進の制約と比較するものである。

 

移転の自由ととらえることに異論もありうるが,基本的には,江戸時代の関所など権力による移動の自由の制限も,藩をまたいで転居することの禁止などの転居の自由の制限も,土地に個人を縛り付けることが封建社会を維持する本質的機能の観点では本質的に同質であり,移動・転居を移転の自由の保護範囲に併せ含めるのを妥当と考える。

判例が外国渡航の自由を外国移住の自由に含めているのもこの解釈と一貫する。)

 

自動車での移動と徒歩での行進という違いもある。

 

 

【解答】

 

1.移転の自由の制約

 

移転の自由は複合的性格を有する人権であるといわれる。経済的自由の側面と人身の自由の側面,さらに表現の自由と関連するという側面や,個人の人格形成の基盤となるという側面である。それゆえ,移転の自由の制約の合憲性を考える際には,それぞれの場合に応じて具体的に検討しなければならない。

 

憲法第22条第1項の「公共の福祉」を移転の自由との関連でどのように捉えるか。4通りの捉え方がある。

 

A 221項に職業選択の自由と移転の自由が並べて規定されているので,職業選択の自由と同様に,移転の自由に対して政策的制約を課することも可能である。

B 221項の「公共の福祉」は職業選択の自由のみにかかり,移転の自由に対する政策的制約は許されない。

C 221項の「公共の福祉」は文理上は居住移転の自由にもかかるが,移転の自由には経済的側面と民主制の基盤に繋がる側面があり,後者の意味での移転の自由に関しては,精神的自由と同様の「自由国家的公共の福祉」のみが制約根拠となる。

D 判例は,職業選択の自由は人格との関連性は強いが,他方で,職業活動は社会的相互関連性が強いため一般に規制の必要性が強く,政策的制約も可能となるということを論じている(薬事法事件)。このことは,居住移転の自由にも当てはまり,また同じ条文で規定されている以上,別異に解する理由はない。

 

 

2.考え

 

交通の総量を規制する必要性は,特に本件のような自動車での移転の自由の社会的相互関連性の1つの本質的発現であるから,Dの捉え方が現実に即しているといえようか。しかし,学説はDの見方をあまり意識していない。学説ではCが有力であるが,本件では,一律に精神的自由の制限といえないし政府もこの規制に名を借りて何か個人の表現や内心を規制しコントロールしようという意図も見てとることは到底できないので,精神的自由の制限・侵害とみることはC説からもないだろう。

 

デモ行進の自由は,コミュニケーションの自由や集会の自由として捉えられることはもちろんであるが,スポット的なものでありまた歩行によるものであるから社会的相互関連性は自動車での移動ほど高くない。さらに,道路はパブリックフォーラムであるため,道路における表現の自由は強く保護される必要がある。届出制にとどめなければ違憲である。

 

 

【脚注】

 

  • なお,憲法22条第2項の「外国移住の権利」には一時的海外渡航の自由も含まれるとしつつ,旅券発給拒否という一種の事前抑制に対して,「外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく,公共の福祉のために合理的な制限に服する」とした判例がある(帆足計事件)。旅行の自由がコミュニケーションの自由という側面を有すること,当該事件ではモスクワでの政治的活動をするための出国だったことから,適用審査において精神的自由の側面が問題とする余地はあったが,最高裁は判決においては,そのことに触れることはなかった。