海外市場におけるプロダクト戦略
はじめに
人から依頼を受けて,表題のテーマでアイデアをまとめることになった。
ご参考までにアップします。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
- 作者: クレイトン・クリステンセン,玉田俊平太,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2001/07/01
- メディア: 単行本
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1.安価品(ローエンド)をやるメリット
- 顧客層の拡大
- 既存のローエンドを製造している競合他社のスペック向上・ハイエンドへのキャッチアップへの対処ができる
- 情報が入ってくる
- Volumeが取れ,全体の個別原価が下がる
- ハイスペック品のアウトグレードを転用できる
- 安価製造のトレーニングになる
2.高価品(ハイエンド)に固執するリスク
- ローエンド品のスペック向上による代替によるハイエンド市場の破壊
- ローエンドメーカーに市場での経験を積ませてしまい,レッドオーシャンに突入するリスク
- 過剰品質となる分野では全然顧客が取れない
- 少量多品種生産となり,原価が高止まりになりがち
- 設計・開発が硬直化(機能を足す方向でしかものを考えなくなる)
- ローカル化の不足を招き,正面から海外市場で戦えず,日系企業相手になる
- 日系の現調化の流れに乗っていけない
3.新興国市場での戦い方
新興国市場=成長市場
日本企業:高い技術力を持っていると言われながら,新興国市場で成功している例が少ない
日本企業の製品=「過剰品質」=現地市場中間層のニーズを必ずしも的確に捉えているとは言えない
→経営資源が本国に偏っており,成長市場で事業を伸ばすために適切な資源配置が行われていない。こうした状態は,「イノベーターのジレンマ」と同様の状況
リーダー企業が失敗するのは,従来の大手顧客の要望だけに効率的に応えられるようになり,新規顧客の要望を見逃してしまうから。従来の顧客により適合することが新しい顧客に適合できない失敗要因になっている。日本企業がアジア市場で直面する課題もこの問題とよく似ており,「新興市場戦略のジレンマ」ということができる。
新興国中間層市場への対応はどうするか。新興国市場,とりわけ中間層市場において,しばしば指摘される問題は次の3つ。
- 過剰品質で価格が高すぎる
- いくら良い製品を作っていてもその製品の良さが理解されない
- そもそも製品の仕様が現地のニーズからずれている
どのようにして,このような問題をどう克服するか。
新興国市場でなかなかうまくいかない日本企業の製品を見ていると,必ずしもその製品自体が悪いからだとは思えない例が多い。日本企業の技術力やものづくり能力は依然として高い。日本企業の成果が低いのは,技術力やものづくり能力を活かすビジネスモデルや,ものづくりの価値を顧客の価値に転換していく活動が不足していることにある。
この問題を克服するには
- ジレンマが発生する要因を正しく理解
- 新興国市場に適合する品質・機能軸を再検討
- 「適正品質」を基軸に市場戦略を再構築
- 低価格戦略による市場浸透化に備えるために経営資源の配置をこれまでのものからドラスティックに再編成
する必要がある。
4.個別的課題と対応策
・ローエンド市場において,現地のローカルメーカーに対しては後発であるという問題
- 慢性的なモノ不足に陥っているニッチな分野を攻める
- 不良の多発など既存品への不満をつく(ローエンドと言いながら「セミハイエンド」)
- コストリーダーシップをとる
・人件費・その他固定費の問題
※ 現地企業は,日本企業の製品をまねて開発費を節約しているため,開発費を原価に織り込むと競争上不利になるので,原価の考え方を変える必要がある
・限界利益の確保の問題
- 原料のスペックを変える
- 原料の調達経路を変える
- 製法を工夫し,プロセスを省略する
- 品質基準を下げ,歩留まりを上げる
- 余計な機能をカットする
※ 品質を下げても対してCost Downしないという可能性もある
・高スペック品を作るように組織が最適化されているという問題
- 新興国市場に取り組む日本企業の多くは,開発設計は日本に残していることが多く,それが現地の販売現場と離れていることが問題
- 組織の最適化・現地人材の充実
- 経営マインドの変革
さいごに
メタ的に見ると,そもそも企業活動において,現状の生産設備・人員・ノウハウ + 少ない追加投資で大きなリターンを得ることを「善」とするかどうか。善とするのであれば,不慣れな土地でもがき苦しむことになるだけなら,いたずらにオーガニックで拡張する方針自体も見直していく必要があると思います。