#株式投資ノート

個別銘柄の分析やPFの記録など

投資家目線での企業価値向上のチェックポイント #株式投資

Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoftのような,株価が上がり続ける企業の株を持ち続けたいと考える人は多いと思います。同時に,そこに至るまで類似又は同等の幾多の会社が脱落したことにも目を向けなければなりません。今回は,企業価値向上のポイントとして,先人たちの各種論考(学術論文ではないので個別の出典表示は省略)と私のPEファンドの経験を参照し,まとめてみました。株式投資のご参考になればと思います。

※本記事は2017年に書いた記事を2021年4月にアップデートしたものになります。

 

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企業価値はどうすれば高まるか

企業価値を高めるには,長期的に価値を創造できるようにして,将来のキャッシュフローの改善に注力すれば良いわけです。長期的利益を犠牲にして短期的利益に走らない方が合理的な場合が多いと思われます。株主としても,この立場を徹底すれば,短期的な業績,短期的な株価動向,短期投資家の意見は無視することが得策です。結局,売り買いがこなれれば,短期的利益を追求する株主が排除され,長期的に投資する株主が増えれば株式市場でのファイナンス戦略は成功し,企業価値向上にも大きなパートナーを得たことになります。

私はGoogleAppleAmazonのガチファンで,手放す気はさらさらないですが,そういうことだと思います。ただし,最近のTeslaのように,人気銘柄でArkなどの機関投資家のホールド割合が増えれば需給がタイトになって値動きが荒くなることもあります。需給要因とストーリーで引っ張られて理論企業価値に対して株式価値のValuationが高くなりすぎたら,みんながショート目線で見始める分岐点がどこかできてしまうので一旦降りた方が得策です。

※昨年12月,ソフトバンクGの非上場化の憶測記事がBloombergから出て,株価が急騰した事件がありましたが,株式市場があまりに短期的に生み出すキャッシュローに基づき株価を決定することを繰り返して改善されなければ,非公開化で経営の意思決定を迅速にし,短期的な業績変動に左右されることなく事業改革を実施するということも,考えていく必要があると思います。ただ一方で,「上場後に経営の意思決定が遅くなり,短期的な業績変動に左右され事業改革を実施するどころではなかった」ことを株式市場のせいにしている場合もありえます(よくある自己評価過大の認知の歪みです。株式市場のメカニズムに対する懐疑的態度という傲慢はほどほどにしておく必要があります)。

 

 

適時開示と理論株価について

株式に限らず資産一般の価値は,トレードセールで値が付く価値とは別として,本源的にはその資産が将来生み出すキャッシュフローの現在価値です(機能的フィクション)。実際,DCFモデルでは5年から15年程度の予測期間における現在価値と予測期間以降の永続価値の現在価値の合計で企業価値を算出したりします。マルチプル法も同じ変数で操作がやや単純になるという違いはありますが,基本的に同じです。企業が永続する前提で株価を算出するため,次期の業績が株価に占める割合はごく僅かなのです。業界によって差はあるといえ,5年以降のキャッシュフローが現在価値に占める割合は,8割ほどとされます。

予想EPSに予想Fair PER(Compsと成長性と銘柄としての人気度を考慮したややあいまいな値ですが)を掛け合わせて株価を予測するような単純なアナリストは論外として,足元の成長性,実績ベースn-1年度→n年度(g1とします),フォーキャストベースn年度→n+1年度(g2)とします。この変化率(ここでは単純に不等式で比較します)が,直近決算でg1>g2(さらにはg1>g3とかg2>g3)となっていることが鮮明な場合は,かなり水準訂正が入ってくることが,ハイグロ系では多いと思います。

また,傾向として,コンセンサス予想をBeatする決算を出し続けている企業が結局長期的にも成長するグレートグロース銘柄になったりするため,その辺りはビジネスの良さやマーケットサイズやシステムの優秀さやプロダクトを生み出す力が裏付けになっていることが多いです(無理に数字を作りに行かなくてもOKな会社だから容易にBeatできる)。

Valuationもここ10年で日進月歩でここでは短期利益か長期利益かという二分法はあまり意味はありません。

IPOしたばかりの企業に関しては,投資家やアナリストの期待が妥当な水準に収まるように,コンサバティブな業績予想開示を行うことが望ましいとされます。過去の業績データが限られるためです。投資家もアナリストも情報不足により分析が大変であり,場合によっては過度な期待をし,株価が正当な水準を超えてしまい乱高下するリスクもあり,その結果投資家から敬遠されてしまい,実力以上にアンダーバリューされて放置されてしまうことも起こりえます。

 


IRについて

エンジェル投資をやっていて実感するところですが,IRをおろそかにする会社はダメな会社であることが経験的に多いです。株主との対話は,直接的にはカネを生むものではないが,カネの生み方に関して株主や投資家から客観的な意見をもらえる良い機会です。社長は会社にいる限り,誰にも意見されるようなこともないため,いくらでも言いたいことや聞きたいことを持っている投資家との意見交換は経営上のヒントを得られる貴重な機会です。上場企業においても当てはまると思います。

投資家は社長との直接の対話を望んでいます。IRが作成した型通りのメッセージはノイズであり読みたくもありません。CEOに自分の言葉で現状を説明してもらうことが必要です。投資家が資本を託し経営を委託するのは第一義的には社長であり,そういった事物の本質上,IR活動や広報活動は社長の仕事であるはずです。今は幸いYouTubeなどの動画メディアが手軽に利用できるので,株式投資の際はカンファレンスなどの社長の発信をチェックするようにしています。

 

問題は企業の長期的発展のストーリーがあるかどうかです。

この点,創業経営者や創業一族系の経営者は,ストーリーやメッセージに事欠かないことが多いです。自分でゼロから会社を興したり,この世に生まれた時点で後を継ぐことが決まっていたりするため,個人やファミリーのストーリーの一部としてビジネスが存在するからです。また,一歩間違えればすべてを失うことがオーナー経営の構造的特徴です。資産のリスク分散と正反対の立場にいます。だから,IRでのコミュニケーション以前の安心感があります。日本の中小型株で5倍10倍株の発掘を目指すスタイルの投資家はこの点を非常に重視する例もあります。

一方,非創業系の日本の経営者の大部分は企業のストーリーが語れません。ほとんどの経営者は,単なる「担当者」になってしまっています。中期経営計画に関してもストーリーがないケースがあります。「目標達成までのプロセス・戦略が明確でない」,「ビジョンが抽象的で分かりにくい」ケースがあり,これは経営者が真面目に考えていない証拠かもしれません。とりあえず利益の目標数値を示すことに精一杯で,思考を重ねて重ねて何度も書き直して真実に近づく姿勢を持ちえない。自分で手を動かさなくなって錆びついてるおじさんが多いためです。これでは鋭い投資家やアナリストのノイズに負けてしまいます。

創業経営者のような実績やコミットメント構造がないのであれば,ビジネスモデル(金の儲け方)について考えに考え抜き,書いては書き直して自分の信念を自分の言葉で投資家や株主が納得できる形で説明するしかありません。そして説明の通りに実現するよう全力で取り組み,実現できなければ辞めることになります。実現できない経営者が辞めれば株価は上がり,株主のためになるということになります。株式会社という制度の趣旨を突き詰めるとそういう帰結になります。

※具体的には以下のような内容を投資家やアナリストに訴えればよいと考えられます。一例として,日本電産の決算説明資料やカンファレンスの内容は非常にこのスタイルでわかりやすいです。
①現状はこうである
②将来はこうありたい
③そのために●●の分野もしくは地域を攻める
④そのために必要な能力は●●
⑤その能力はこうして育てる

 

 

マルチプル分析の有用性

もちろんDCFモデルを利用して,自社の内在価値,つまり理論株価を算出するのも正しいのですが,社内の人間であろうとも長期の業績予測は困難であり,また資本コストを正確に算出するのもほぼ不可能なため,DCFモデルの利用は私はお薦めしません。

PSR,PER,PBR,EV/EBITDAといったマルチプル,及び成長性を競合他社と比較することをお薦めします。

マルチプルを算出するのは,他社と比較して割安だと不満を言ったり,割高だと言っていい気になったりするためではなく,自社の過去と現在の比較,他社との比較で,会社を定点において観測することで,会社の属する市場の評価及び当該市場における当該会社の位置を,過去からの推移とともに立体的に把握するためです。

マルチプル法の利点として,競合他社と比較した相対的成長性(競合他社の成長性に対して何ポイント優れているか)という概念もここで導入したいと思います。マルチプルには成長性が織り込まれています。当該マルチプルは株式市場で民主的な合議の結果(年間250日×1日5時間!),決まったもので,それは一つの答えです。しかし,ピッカピカの成長企業がギトギトの低成長企業(もちろん同業の)と同じマルチプルでよいわけがありません。ここは指数関数とその逆算(〇乗根)で難しいですが,例えば当該相対的成長性が+10%であれば,単純に対象会社のマルチプルを1.1で割って同業他社と比較してもいいですし,いやいやその相対的成長性がその率で3年続くと考えるのであれば,1.1^3で割ってもいいわけです。

株価が下落している時には,真摯にその原因を考える必要があります。割安だとか,株式市場はおかしいなどと考えるのは傲慢です。何かの特需でピークを付けて成長性が実績とフォーキャストで鈍化に転じており,競争激化もあってそれが一過性でないと評価される場合が典型的です。

マルチプルが競合他社と比較して高めの場合,それはその会社がエクセレントである結果と受け止めてよいのですが,常に注意は必要です。期待で長期的成長性が織り込まれすぎている場合があるためです。業績下方修正や成長鈍化の兆候などのネガティブなニュースがあると,株価が急落しやすいためです。そういうダウントレンドのモメンタムが発生した時には株式市場の期待は,時に一瞬で消え去ってしまいます。会社が株価にふさわしいのかどうか,株価に織り込まれた株式市場の期待は高過ぎないか,それだけの成長の機会が本当にあるのかセルフチェックしておくことが望ましいと言えます。そのためには毎回の決算は必ずチェックするようにすることをお薦めします。

 

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設備投資・研究開発が長期的な企業価値向上の鍵

設備投資や研究開発を行うと,その年度はキャッシュアウトフローが発生し,キャッシュフローにマイナスになることもあります。しかし,正しい事業投資であれば,その後投資額を上回るキャッシュインフローがあるはずです。トータルで考えれば企業価値は高まるが,投資を実施したタイミングだけを見ると,キャッシュフローが悪化し,利益も減るということになります。短期主義の罠に嵌る企業は,業績予想値に達しないようであれば,投資先送りという利益調整をすることになります。ただし,その間に競合他社が積極投資を行うリスクがあります。短期的にはメンツを保てても,長期的には競争優位性にマイナスの影響を与えかねません。

短期的に業績が悪化したとしても,設備投資や研究開発を長期的戦略で行った方が正解である場合が多いと思います。アナリストや短期投資家や日経新聞は短期的な業績の悪化が原因で騒ぐかもしれませんが,とりわけそういうタイミングは金融相場だったりします。株式市場は将来を織り込みに行く性質があります。逆に,投資をさぼって成長スピードの鈍化の兆候が見られると株式市場は厳しく反応します。

※2020年,コロナ禍でのトヨタ自動車は研究開発費を絞ったり大掛かりな在庫調整をしたり単価で下請を泣かせて自社及びTier1の利益を確保しました。テスラ社に研究開発でおそらく数年分は遅れたと思われます。また,生産調整が行き過ぎ,経済再開時に,部材不足とりわけ車載半導体の深刻な不足を招くことになりました。

 

 

ここまでが基本ですが,以下,企業に対する選別軸・評価軸となりそうな視点を書いておきます。

 

 

事業会社にとって,M&Aは相当難しい

ウォーレン・バフェットは,野球を題材にM&Aを以下のように説明します。

テッドはストライクゾーンを77個のセルに切り分けた。各セルのサイズはボール1個分である。彼にとって“最高な”セルの投球だけを打てば4割になり,“最悪な”セル(外角低め)に手を出すと2割3分に打率が落ちることを彼はわかっていた。つまり,打ち頃の投球を待てば野球殿堂入りで,どんな投球でも無差別に打ちにいけばマイナー行きということだ。これは打ち頃の投球が来るまで待つという姿勢を意味している。実はこれが通常は難しい。金融機関は投資家をアクティブ,つまり動かすことで手数料を取り利益を上げる。投資家が株式の取引を頻繁に行えば行うほど利益を上げることができるし,M&Aもしかり。彼らの提案には,打ち頃のものもあれば,そうでないものも混在する。投資家自身が判断をしないといけない。残念ながら,M&A経験の浅い企業が的確な判断ができるとは思えない。よって,株式市場も買収の噂に素早くネガティブに反応する。

よく日本企業が海外の会社をとんでもないマルチプルで買ってしまい,失敗していると言われます。M&Aでは投資期間は無限に近いわけであり,短期的な魅力度は重要ではありません。長期的にどのような価値をもたらすかが重要になるはずですが取って付けた理由でとにかくM&Aにこぎつけようとします。

また,Valuationをコンサル会社に丸投げで彼らの作った複雑なモデルを誰も理解せず投資判断をしている企業が非常に多いです。PL,BS,CS,KPIくらい自分で作ってみろと言いたいです。

さらに,切った張ったの交渉がサラリーマンなのでできない。案件をクラッシュさせてもいいという覚悟がないからです。

また,買うものには必ず相場というものが存在し,買うに値するタイミングというものもあります。経営者にはあまり相場と対峙したことがある経験がない人が多いようです。また,海外のその現地での生活実感のない経営陣に当該海外企業への投資可否の判断ができるとは到底思えません。

M&A失敗の悲劇はかなり先の時点で生じるため,M&A検討チームはとりあえず実績作りをすることになります。M&A検討チームは,バフェットの比喩を使えば,「外角低めの球も打つ構え」に入っている状態です。

NTTドコモは海外のM&Aの繰り返しの失敗で企業価値が溶けてしまっている最たる例です。最近でも日立,日本郵政も大失敗として取り上げられています。これからパナソニックもそこに入ってくるかもしれません(2021年4月23日時点)。

M&A投資枠の金額は株主に還元する方が株主にとって望ましい結果になると思われます。M&Aの発表の翌日には株価を下げるという事例がけっこう多いです。

ただし,GAFA日本電産のようなハイパーエクセレント企業はM&A(成長する,ワイドモートを作る,脅威となりそうな競業の芽をつぶす,割安で高成長企業を買う)がうまいのですべてがそうではないということを付け加えておきます。

なお,ファンドビジネスとしてしっかり挑戦する企業があるのでこれとはしっかり区別する必要があります。

 

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手元資金について

高成長,高リスク企業は手元資金を潤沢に持つことが普通です。高成長企業(テック系に多い)は成長投資の機会が豊富であり,手元資金を十分に持つことで投資のチャンスを確実につかむことができます。一方,高リスク企業(典型的には建設業)であれば,業績の悪化によりキャッシュフローが悪化すると企業として存続ができなくなるなどのリスクがあるため,手元資金を多めに持つことになります。

事業計画をベースにキャッシュインフローとアウトフローの予測をすることは可能だが,事業計画ほどあてにならないものはありません。これを真に受けて最適な手元資金額を算出し,その額を上回る現金を余剰現金として全額株主還元に回したりすると,後に社債を発行するような羽目になりかねません。アクティヴィストファンドが理詰めで会社のキャッシュをついばんでその後リスクに対応できず傾くという事例も散見されます。

競合他社よりも手元資金の割合が高い場合は根拠が必要となります。例えばビル・ゲイツ時代のマイクロソフトは,少なくとも一年分の営業経費と売上原価に相当する額の手元資金は保有したいと考えており,その額が約200億ドルだったということがあります。余計な心配で時間を取られたくないということです。実際に現在もGAFAMのバランスシートにはCashとCash Like Item(上場有価証券や債券など!)がたくさん載っています。ROE的にはdisですがあまり知られていないですね。

 

 

自己株買いで株主還元

Appleの還元率は最新決算で90%以上との報道も最近(2021年4月)ありましたが,これは完全に異次元の事例として…

一般的には,成長が鈍化しているケースで,投資家からの株主還元要求が高まります。実際のところ,日本企業の多くは潮時がすでに来ていることを認めた方がいいと思います。成長性が陰りを見せ株主還元をより厚くすべき企業が多いのは確かであるし,またより厚くできるだけの余力がある企業も多いです。

株主還元だけは他社に負けたくない!などと無理をすると,後に減配する羽目になるだけです。減配はこの世で最も最悪なもののひとつです(笑)。コロナ禍で減収減益の中,90%を超える異常な配当性向を付けたりする会社も見受けられます。

※例:JT

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株式価値は,キャッシュフローを生み出す能力(1株当たり純利益(EPS))や配当利回りを信頼してトレードされることにより繰り返し確証されるものであり,自社株買いによる株主還元は二次的なものに過ぎず,自社株買いによる株主還元の期待で株価が形成されることは,基本的にはないと言っていいと思います(一度発表した自社株買いを撤回する場合は別です)。

以上から,配当に関しては減配のリスクを回避するために,出し惜しみをして少しずつ増配することが必要となります。そして増配しても余剰現金があるようであれば,バッファーとして自社株買いを行い,調整することができます。

花王は30期連続,米国のP&G社は64期連続で増配しており,無理な増配をしていればこれだけの長期間にわたり増配は不可能だったはずです。

一方,自社株買いは配当と異なりコミットメントが高くないため,毎年の投資計画に合わせて縮小しても株価への影響は減配のように大きくありません。無理に増配するよりも,リスクが小さいです。これによりEPSが上がる(発行済み株式総数という分母が減る)という効果があり,同じ配当性向でも配当利回りが向上する効果もあります。

ただ,この安いクーポンで長期資本を調達できる環境下では,エクイティではなくボンドの比率を高めた方が良いわけであり,高配当によりいたずらに資本コストを悪化させることはナンセンスです。

※上記のJTについても社債を発行して自社株買いをするという選択肢が合理的と言えます。

※バフェットが日本の総合商社の株を買っている点については,ローンとエクイティの利回りのスプレッドを取っているだけ,見方もできます。



FCFの改善に努める

FCFの計算式
FCF=営業利益(1-実効税率)+減価償却費-設備投資額-運転資金増加額

FCFを増加させるには,営業利益を増加させ,設備投資と運転資金を減少させればよいが,営業利益を増加させることはそう簡単でない上に,実効税率の影響を受けるため,営業利益の増加がそのままFCFの増加につながることはありません。

一方,設備投資と運転資金は実効税率の影響を受けないため,増減がFCFにそのまま影響します。削減できればその額がそのままFCFの増加に直結します。

しかし,将来に向けた投資を削減し続けるわけにもいきません。そこで運転資金を削減する努力をする企業が評価されます。

※コロナ禍で日本電産など日本企業が今こぞって大掛かりなコスト削減プロジェクトに取り組んでいる状況です。DXも加速してくると考えられます。日本電産はすでに目覚ましい成果が出ており,今後さらに加速すると見られます。

運転資金の削減には投資が必要になるわけでもなく,社員の知恵を活かすことで可能です。今日からでもできる企業価値創造への取り組みといえます。部門間の壁をなくすなど,お金をかけずに社員の知恵と努力で対応できるものであるため,運転資金の改善に取り組んでいる企業はいい企業です。

※ 経営指標としてのEBITDAの問題性:EBITDAはM&Aで良く利用される指標であるが,経営指標として利用する企業もあります。もちろんキャッシュフロー指標であるため,CFの改善に役立つもので,かつ簡便性があるが,バランスシートを考慮しないので,FCFと比べて欠点があることは認識しておくべきです。特に在庫や売掛金は注意深くモニターする必要があります。EBITDAをキャッシュフロー指標として利用すると,運転資金がおろそかになる可能性があります。次に設備投資額が考慮されていないことも欠点です。これでは効率的に設備投資を行うというインセンティブが失われてしまう(低いリターンでも設備投資したもの勝ち)ことになります。