k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

続・【旧司法試験平成7年度 民法 第1問】不法投棄に関する法律関係

 本問はいろいろな捉え方があるという意味で,最高レベルに本当にいい問題です。昨日に引き続き,少し違ったアプローチでも書いてみました。

 

事案に入り込んでいけばおのずと文章ができていきます。パターン化した「論証例のストック」なんて必要ないですね。

 

【問題】

 飲食店経営者のAは,不要になった業務用冷蔵庫を,知人のBに頼んで破棄してもらうことにした。Aが,店の裏の空き地にその冷蔵庫を出しておいたところ,近所の住人Cも,不要になった冷蔵庫を破棄したいと思い,勝手にAの冷蔵庫のそばに自分の冷蔵庫を捨てた。Bは,トラックで空き地に乗り付け,そこに置いてあった2つの冷蔵庫を回収して,Dの所有する山林に不法に投棄した。これを発見したDは,付近が近所の子供達の遊び場になっているため,2つの冷蔵庫に各5万円の費用を費やして危険防止に必要な措置を講ずるとともに,A,Cをつきとめた。なお,Bの所在は,不明である。

 この場合に,DがA,Cに対してどのような請求ができるかについて,A,Cからの反論を考慮して論ぜよ。

 

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【回答】

第1.冷蔵庫の撤去について

1.Dの請求

 Dは,冷蔵庫の持ち主A,Cに対し,撤去を求めたい。方法としては,所有権に基づく妨害排除請求が考えられる。物権的請求権については直接規定した条文はないが,物に対する円満な支配を維持するため当然に認められる。

2.Aの反論

 Dからの請求に対し,Aは,所有権を喪失したため,撤去義務がないと主張することが考えられる。本件では,Aが,Bへの処分委託に基づき(処分をBに請け負わせたものとみられる。民法第632条),自己の店の裏にその冷蔵庫を出したことにより,適法に所有権をBに譲渡したとみるべきである(Bに引き渡した時点でAは資産の除却を行うであろう。)。これにより,AはDからの妨害排除請求に対し,所有権喪失の抗弁を提出することができる。

 ただし,Aは廃掃法上の「排出事業者」に当たるところ,Bが適法な産廃業者であることの確認を怠った場合には,不法投棄を行っていることになり,信義則上所有権喪失の主張はできないと解すべきである(民法第1条第2項)。この場合は,妨害排除義務として,自らの費用負担で冷蔵庫を引き取る義務を負うものと解すべきである。

3.Cの反論

 Cは住人であり,事業者ではない。この場合は自治体の取り決めに従い粗大ごみとして適法な手続で処分しなければならない。Cはこれに反し,その冷蔵庫をAの店の裏の空き地に不法投棄している。このような処分による所有権の喪失の主張は,信義則に反し無効(民法第1条第2項)である。よって,Cは所有権の喪失をDに対抗できず,妨害排除義務として,自らの費用負担で冷蔵庫を引き取る義務を負うものと解すべきである。 

 

第2.不法行為に関して

 そもそもDの土地に冷蔵庫を不法投棄したのは直接的にはBであるから,ACは不法行為責任を負わないと言えるであろうか。AにとってもCにとっても,その冷蔵庫がBによって不法投棄されることは予期できないことであったかもしれない。しかし,仮にAが廃掃法の手続に則らずに処分していたとすれば過失ありとなる。また,Cはそもそも過失ありといってよいであろう。

 因果関係も,そもそもAやCがAの店の裏の空き地に冷蔵庫を放置しなければ,Dの土地に不法投棄されることもなかったのであるから,具体的なDに対する不法行為は予見していなかったとしても,第三者の土地に不法投棄することには相当の寄与をしているといえ,相当因果関係は認められる。

 以上から,Aは廃掃法の手続に則っていない場合,Dに対し不法行為が成立する(Bとの共同不法行為民法第719条)又は注文者責任(民法第716条))。

 他方,Cは本件の行為態様からDに対する不法行為が成立する(Bとの共同不法行為民法第719条)。ちなみに意思の連絡はないが,客観的共同で足りるとするのが判例である。)。

 なお,共同不法行為が認められる場合,DはA・Cそれぞれに対し,危険防止措置費用(合計10万円)及び撤去費用をそれぞれの冷蔵庫投棄行為に関連する損害として,請求でき,A・Cの各債務は相互に不真正連帯債務の関係に立つ。

 

第3.事務管理費用の償還請求

1.Dの請求

 本件では,Cは不法行為責任が認められるので,事務管理を検討する必要はないが,Aの場合は,無過失で不法行為責任が認められない場合もありうるので,その場合,事務管理に基づく請求をDはしていくことが考えられる。

 DはAの所有物が,子供に危険を及ぼすことを防ぐため,適切な処置を施している。これは事務管理(697条)であるから,それに掛かった費用の償還をACに対して請求すると考えられる(702条)。

 本件の場合,現に,ACらの冷蔵庫によって危険な状況が実現していた以上,子供が怪我をすることによって,Aが不法行為責任を負う可能性もあったのであり,危険防止措置は客観的に見てAの利益にかなうと主張し,Dの危険防止措置が,「他人のため」(697条)に当たり,事務管理の成立を主張していくことが考えられる。

2.Aからの反論

 上記第1.2で論じたとおり,Aに過失がない場合,Aはすでに所有権を喪失している,という主張が認められるため,Aが不法行為責任を問われることはありえず,Dの危険防止措置はAのためではなく,Aとの関係で「他人のため」に当たらないと解すべきである。結果,Aに過失がない前提の事務管理の局面では,DのAに対する事務管理費用の償還義務は認められない。

 

【参考】

下記の書籍の他,下記のサイトを参考にさせていただきました。
(法学座敷牢さん,ありがとうございます。)

http://hougakuzasikirou.nobody.jp/kako/min/minkako7.html

 

 

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