k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

平等権と自由権どちらを主張するか問題

法の下の平等の保障(憲法第14条)は,自由権財産権・人格権(実体的権利)とは保障の観点が異なることから,実際の憲法問題においては,競合が容易に生じえます。

今回はこの問題について考えてみたいと思います。

 

平等権と実体的権利を考えた場合の組み合わせについては,それぞれ(2通り)の有り無し(2通り)で2×2=4の場合が観念でき,

A. 実体的権利のみの審査が行われる場合

B. 実体的権利が存在するところで平等権のみの審査が行われる場合

C. 実体的権利と平等権が異なる観点から併列的に審査される場合

D. 実体的権利が存在しないところで平等権が適用される場合

が論理的に存在します。

 

ここで,再犯の可能性の高い犯罪類型(性犯罪など)の犯歴を有する人に,(1)学校付近1kmに近づいてはいけない法律,(2)体内にチップを埋め込み公権力で行動監視する法律ができた場合にどういう憲法問題になるでしょうか。

 

 

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(1)に関しては,Bの審査類型が妥当であると考えます。一定の区域への立ち入り禁止ということでは,居住・移転の自由(憲法第22条第1項)の問題ととらえることになると思います。これでは事案の本質をとらえることができません。

※仮にそれがジャーナリストの取材活動が制限されることになった場合直ちに憲法第21条第1項の問題になるか?消極的自由の制限に該当するとは言いづらく,難しいと思います。

Bととらえることで,なぜ犯歴の有無でそこまで居住移転の自由の取り扱いが差別されなければならないか,という平等権に立脚した審査が可能になります。その場合,目的手段審査は,再犯による新たな被害発生防止という目的との関係でその人的対象範囲(人の区別の合理性),場所的対象範囲(規制手法の合理性),時間的対象範囲(規制手法の合理性)などが審査されることになると思います(過剰包摂かどうかの審査)。また,尊属殺刑罰規定違憲判例や尊属傷害刑罰規程合憲判例のように,仮に目的との関係では手段として合理的でも,不相当に重い刑罰ではないかという観点,本件でいえば例えば再犯率統計学的に低いにもかかわらず過剰に規制していないかという,得られる利益と失われる利益・害される権利との比較考量の問題(相当性)も問われることになるでしょう。

さらに,他の犯歴でも同等の再犯率にもかかわらず,性犯罪だけを捉えているとすると,そこでの平等問題も審査されねばなりません。これもすぐれて平等権の固有領域でしょう(過少包摂から「不正な動機」を判定する審査,すなわち「性犯罪者に対する特種の偏見・嫌悪からの規制と推測できるのではないか」という問題設定)。

 

(2)に関しては,Cの審査類型が妥当と考えられます。人体を侵襲し,終生不変のチップを埋め込むことに対する個人のアイデンティティ問題(残虐な刑罰(憲法第36条)に該当する可能性があると考えられます)や,個人のプライバシー侵害(憲法第13条後段の幸福追求権)などの実体的権利の問題になりうると考えられます。

さらに平等権の問題として,過剰包摂の問題,過少包摂の問題,相当性の問題が審査されることに固有の意味があるでしょう。ただ,相当性の問題がほぼメインということであれば,実質的には実体的権利侵害の審査と近くなることは否めません。

 

補足すると国籍法はDの問題ということになると思います。

 

最後に,Bについて,実体的権利を云々せずとも平等審査の枠組みで充分な尊属卑属関係における刑罰加重の事例の他に,考えられるものがあります。

それは憲法第14条第1項後段列挙自由に基づく区別で特に人種に基づく区別の場合です。

この場合には,人種差別の歴史への反省を踏まえ,また,人種による能力差や性格差や価値の優劣を想定することを断固拒否する「個人の人格の根源的平等の思想」の根本に反するものといえ,絶対的禁止になると解され,その論理的帰結として実体的権利云々のCを敢えて問いに設定すること自体,「『実体的権利の有無で差別の許容範囲が違う』ということを含意する」ことになってしまい,憲法の歴史・思想をわかっていないということになるように思います。従ってこのような理由でBとなる場合があると考えられます。

付言すると,人種の場合は黒人専用トイレのように「区別すれども平等」も違憲となります。この場合はDの類型です。

 

 

「憲法上の権利」の作法 第3版

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