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経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

改正民法で司法試験を考える④ 契約の個数,多数当事者の債務,共有

本連載は,改正民法をベースに司法試験の問題を再検証することによって,改正民法の理解を深めるためのものです。第4回。契約の個数,多数当事者の債務,共有。

 

 

平成3年度旧司法試験第二次試験論文式試験問題 【民法・第2問】

 

A、B及びCは、共同してD所有のリゾートマンションの一室を代金1500万円で買い受けた。A・B・Cの間では、売買代金を各自500万円ずつ負担するとの約束があった。
(1) 約定の日に、B及びCは、それぞれ代金として500万円を持参し、Dはこれを受領したが、Aは、代金を持参せず、その後も支払おうとしない。この場合、Dの採りうる法律上の手段について述べよ。
(2) A、B及びCは、マンションを買い受けた後、これを交代で利用していたが、A及びBは、Cに無断で、マンションをEに賃貸し、Eがこれを使用している。この場合、Cの採りうる法律上の手段について述べよ。

 

 

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 (答案構成メモ)

 

 

小問(1)

 

前提として,本件売買契約(民法第555条)の個数は1個である。目的物の個数も1個であり,売買代金の負担はA・B・Cの間での合意でありDとの合意ではないからである。これを前提として採りうる法的手段を列挙する。

  1. Dはまず本件リゾートマンションを引き渡さないという手段をとることができる。不動産取引において引渡先履行はまず考えられない。これは同時履行の抗弁権に基づく手段となる(民法第533条)。
  2. DはCに対し500万円の売買残代金請求及び遅延損害金請求を行うことができる(民法第555条,第414条,第412条,第415条,第419条)。
  3. DはB・Cの両方又はいずれかに対しても500万円の売買残代金請求及び遅延損害金請求をすることが考えられる。この請求をする場合は,民法は金銭債務は可分債務であり,分割債務となるのが原則であるので(民法第427条),A・B・Cの債務が連帯債務である「特別の合意」を主張立証していく必要がある(民法第555条,第436条,第414条,第412条,第415条,第419条)。
  4. Dは本件契約を債務不履行を理由に解除し,引渡義務を免れつつ,損害賠償請求をすることが考えられる(民法第545条第1項本文,第545条第4項,第415条第1項・第2項第3号)。上記の通り契約の個数は1個であり,解除自体は契約全体を対象とする(民法第544条第1項)。部分解除にするためには特別の合意が必要と解される。

 

 

小問(2)

 

1.Cの,本件物件の賃借人に対する請求

Cは,本件物件の賃借人に対して,所有権に基づく本件物件の返還請求権として明渡請求をすることができる。以下で論ずる。

Cは本件物件を所有している。共有者たるCは共有物である本件物件を持ち分に応じて全部使用することができる(民法第249条)。本件物件の賃借人は本件物件を占有しており,請求原因は認められる。

賃借人は抗弁として,占有権原を主張していくことになる。この点,A・BというCの共有者が本件物件の収益権限を有すること(民法第206条,第249条),A・Bと賃借人自身が賃貸借契約を締結したこと(民法第601条)が,本件では認められる。さらに,A・B・Cはそれぞれ本件物件を購入する際に500万円ずつという均等に購入代金を負担していること,共有物の持分は人数割りで相等しいものと推定される(民法第250条)ことから,Majorityを有するA・B連合が行った賃貸に関しては正権原と認めてよいようにも一見思われる。

しかし,ここでは,A・B・Cはそれぞれ交代で利用していたところ,賃借人の登場により,Cによる物件の利用機会は奪われている。賃借人が入ってしまった以上,一時的にもCが本件物件を利用する機会は事実上ないことになることになり,賃貸とCのTemporaryな利用は非両立の関係に立ち,Cの所有権は確実に侵害されていると言わざるを得ない。また,共有者が単独でなしうるのは保存行為まで(民法第252条ただし書き),Majorityでなしうるのは管理行為までであるところ(民法第252条本文),これらは共有「物」(同条参照)の保存・管理に関してのものであり,法的に当該物件の利用形態をどうするかまでは規定されていないというべきである(共有「物」の変更に関する民法第251条も参照)。保存のための賃貸,管理のための賃貸,というものが社会通念上観念できず,あくまでもそれは「収益」である(民法第206条)。 

とすれば原則に立ち返り,Cはその持ち分に応じて当該共有物の全部を使用できると解すべきであり,A・B・Cが賃料の収受分配という共有持分の実現ではなく,交代での利用という時間的分配としての共有持分の実現形態を採用していたことから,賃借人はたとえA・Bから本件物件を正当に賃借していると主張していてもCに対しては占有正権原足りえず,Cの明渡請求が認められると考えられる。留置権も認められないであろう(民法第295条第2項拡張解釈)。

民法が物の「使用」「収益」「処分」(以上,民法第206条,第249条)「変更」「管理」「保存」(以上,民法第251条,第252条)と文言を使い分けていることに注意。これらの概念は文理解釈上それぞれ別のものと解するのが原則である。賃貸はこの中で収益にのみ語義的に該当するものである。管理に該当すると解するのはやや無理があろう。

また,各共有者には共有物の「使用」のみを単独でなしうるとしている規定ぶりからも,「収益」・「処分」は原則に戻り全員の合意でのみなしうると解するのが自然である(民法第249条反対解釈,民法第206条)。

 

2.CのA・Bに対する請求

CはA・Bに対しても本件物件を利用させるよう請求することが考えられる。これは共有者間のものであるが所有権に基づく物権的返還請求権で主張していくことになろう。Cは共有者A・Bに対して完全な明渡しを請求することはできないようにも思われるが,さしあたり賃貸に供することをやめさせて当該物件の望ましくない使用による劣化を予防するため,妨害予防的意味合いで一時的にCに本件物件の全部の明渡しを認めることが妥当であるとされる可能性があると考えられる(民法第199条からの勿論解釈)。

これとは別にあるいは併せて,A・Bに対しては共有を基礎づける契約の不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができる(民法第415条,第709条)。