k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

バフェットの経営哲学① 株主の在り方

本稿では,株主の役割と経営者がどう企業を経営し,どう株主に接するべきか,バークシャー・ハサウェイのケースをベースにして考察している。

 

 

株主の在り方

 

バフェットは次のように述べている。「当社(バークシャー・ハサウェイ)は,上場企業の母集団において,投資期間が最長である株主基盤を持っており,この特徴は今後も変わることはないはずだ。実際,当社の株式のほとんどは,死んでも保有していたいと思う株主が保有している。90%以上の株主は5年前から変わっていない。また,当社の株式の95%以上は,ポートフォリオにおいて当社の株式が最大の投資となる株主に保有されている。少なくとも数千人の株主が存在し,時価総額が10億ドルを超える企業の中で,株主がオーナーのように考え,行動するという点では当社はナンバーワンである。大株主であれ,少数株主であれ,株主が当社の経営哲学に共感してくれることは,素晴らしいことであり,また満足できることでもある。」

 

バフェットは株主は企業が選ぶべきものだと考えており,以下のようにして質の高い株主構成を構築してきた。

・求める株主像を明確にすること

・実際の経営や情報開示をすること

・自社の株主になるように自己選択を促すこと

 

株主は,価格が日々動き,経済的もしくは政治的な出来事により神経質になった時に売却する候補となる紙切れを保有しているに過ぎないと考えるべきではない。家族と共同で農場やアパートを保有しているのと同様に,永久に関与し続けたいと考える事業の一部を保有していると考えるべきである。

 

バフェットは,少なくとも5年以上の保有を推奨し,レバレッジを活用する短期的な投機家を拒絶する。長期的に企業価値を創造する自信がなければこのような主張はできない。長期的に優れた株価パフォーマンスを生むことを期待できない企業に長期的に投資する株主は存在しない。逆に短期的な株価パフォーマンスに関しては,市場の動向などの影響があるため企業価値の創造が即座に適正に株価に反映されることは保証されない。株主という共同出資者に損をさせないために,投資期間が短期間であれば投資をしないように警告をしているのである。

 

バフェットは,メディアやアナリストのレポートに基づき売買する投資家は自社に相応しい株主ではないと考えている。自身が理解できる事業に長期的投資をしたいという理由や事業が賛同できる方針に従っているという理由でバークシャー・ハサウェイに参画する「パートナー」を,株主として望んでいる。バフェット自身が実践しているように,投資家に対しても投資先についてしっかりと分析した後に投資をすることを求めている。

 

バフェットは,バークシャー・ハサウェイの経営にあたっては,方針,業績,コミュニケーションを通じ,自社の経営を理解し,時間軸を共有し,そして自己の評価と同様な評価をする株主を引き寄せる努力をしている。このような株主を継続的に引き寄せること(反対に,短期的で非現実的な期待を持った投資家にとっては興味がない会社であり続けること)ができていれば,企業の株式は事業価値に相応しい価格で持続的に取引されるはずである。経営戦略,財務戦略,IR戦略を通じ投資家は経営者の「本音」を見破る。自社の株主が短期的であるとすれば,自社の経営が短期的であることが原因であり,「自業自得」なのである。

 

バフェットが自社の株主に求めるのは,価格ではなく価値に注目する投資家。価値ではなく価格を重視するような投機家が株主を構成するようであれば,株価が根拠なく変動するだけでなく,企業が長期的な経営を実践することも困難になりかねない。長期株主の比率が高い株主構成を構築しようと考えるのであれば,企業は言葉だけではなく,長期的な経営にコミットする姿勢を実際に行動で示さなければならない。