k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

【憲法訴訟】違憲審査における目的手段審査と三段階審査の視角

今回はかなり専門的な内容になります。

 

目的手段審査の目的手段というのは,権利制限をもたらす法律の目的と手段が合理的かを問う違憲審査手法で,もともとは権利侵害のために使われたもの、自由権の侵害に対応して創られてきた基準である。目的の重要度に比例して手段の許容度が決まるという意味で,比例原則ともいう。

 

目的手段審査は政治の論理あるいは政策の論理である。政策目的を設定してそのための手段を選ぶというのは政策形成者の論理構造で、裁判官がポリシーメイキングをしていいのかという根底的な論点と結びついており、目的手段の図式を出してくるということは、裁判官はポリシーメイキングをしているのだということを正面から認めることに他ならない。裁判所は司法的政策形成機関とみる立場から採られやすい考え方である

 

一方,本当に政策形成者、ポリシーメーカーとして裁判官を捉えてしまって裁判官が裁判官でなくなってしまわないか,ポリシーメイキングの観点というのをあまり全面に押し出さないほうがよいと考える立場からはこの局面をいわば憲法解釈の最後の局面に抑圧していく。

 

目的手段審査と三段階審査の論点がここにある。

 

目的手段審査は、裁判官がポリシーメイキングをしているのだということをてらいもなく述べてしまう立場からできている。いきなり目的がどうか手段がどうかということになるわけだが、しかし本当にそんなにあけすけに言ってしまっていいものか、あるいは本当はポリシーメーカーであってはいけないのではないかという疑いを持つ人は、できるだけ普通の法論理の中におしこめてしまう。

 

ここで三段階審査の定義を確認する。

 

三段階審査とは、①保護範囲、②侵害、③正当化の三段階で、憲法上の権利に対する制約を正当化できるか審査するものです。憲法上保護される権利は、原則として制約が許されません。したがって、憲法上の権利を制約する場合は、違憲性が推定され、これを違憲性阻却事由」で正当化する必要が生じます。そして、違憲性阻却事由は、憲法上の保護の程度や侵害の程度、立法裁量の余地などで、厳格さが決まります。
この「厳格さ」を「審査密度」と呼びます。そうすると、憲法上保護されるか、②侵害はどの程度かを検討した後、「審査密度」を決定して、③正当化できるかを検討することになります。

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三段階審査では、三段階目の正当化の局面で少し目的手段審査をするくらいの話に押し込めてしまう。要は要件解釈をしっかりするということになるわけで、第一段階,第二段階で、いわば従来なら要件解釈をやっていた部分を表現する。こういう形で可能なかぎりで普通の法律家として裁判官が振る舞って、しかしそこから出てくる形式的な結論が本当に正当化できるのかどうか、あるいはその結論があまりに形式的で別の正当化理由により違憲性を阻却すべきではないかとか、こういうところに三段階目の議論が出てきて、この中で目的手段という比例原則的な判断がはめ込まれるという構造になるのが三段階審査論である。

 

要件をどう解釈するのかというのは、もともとは実体解釈でしかなかったわけだが,もう少し精密にやるべきだと考えるようになってきている。この部分、要件解釈、形式的な解釈の部分、例えば日本国憲法21条「表現の自由」と一口に言っても、言論・出版とか集会・結社とか、あるいはその他一切の表現だとかいう要件があり,これが最初の二段階の論点になる。これに当てはまるかどうか。普通の法律解釈でいえばそれにあてはまればそのまま法律効果が出てくるので、当てはまれば違憲だということになる。日本国憲法は留保のない形で人権条項が書いてあり,憲法22条,第29条を除いては公共の福祉という留保が形式上ついていないので、要件解釈だけすればそれで違憲だという結論になってしまう。でも本当にそのまま形式的に違憲にしていいのか、違憲性を阻却する事由はないのかという論点があり、憲法第12条,第13条の「公共の福祉」があり,この規範的要件の解釈適用という形で,ああでもないこうでもないという話をして、やはり目的手段の関係も出てくるということになる。という構造になっている。

 

それで、「表現」という要件で一体何が保護されているのか、またそこでどういう権利侵害が起こっているのか議論をし、にもかかわらず形式上違憲にしてしまっていいのだろうか、というところでこの勝負をする。ここまで煮詰めていかなければ目的手段をあけすけに言わないというのが三段階審査、ドイツ風のかちっとした解釈方法論ということになる。