k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

憲法問題解析 LGBTの団体に対する公共施設の利用拒否

【事案】
同性愛に関する正確な知識の普及と社会的偏見の解消を目的とするLGBTの団体A会の代表者Xらは,会員の活動報告の合宿のため,Y県に青年の家の宿泊利用を申し込んだところ,Y県当局は次の理由で利用を認めなかった。

  1. 同室宿泊は性行為の可能性がある
  2. 同施設は青少年の健全な育成を助成する目的で運営されており,A会の会員が数人ずつ同室で宿泊することは,居合わせた他の団体の18歳以下の青少年の同性愛行為に対する性的好奇心を煽り,教育上有害
  3. LGBTに対して社会的偏見が強い現状では,居合わせた他の団体との間でトラブルに発展する危険性がある

これに対してXらは,Y県の右措置はLGBTを不当に差別するものであるとして,Y県を相手取り,慰謝料の支払いを求めて国賠請求

 

 

【問題の所在】

 

国や自治体が,公共施設の利用を拒否しても,それだけで自己決定権の直接の規制であるということはできない。

 

また,団体の社会活動を行うことを理由に,同団体の利用を拒否してもそれだけではやはり結社の自由の直接の規制ともいえない。

 

いずれの場合にも,単なる施設の利用拒否によって行為や結社そのものが禁止されることにはならないからである。

 

しかしながら他方で,公共施設の利用許可・不許可の決定に際しては,国や公共団体は不合理な差別を行ってはならず(憲法第14条第1項),また,公民館や青年の家などの施設は「パブリックフォーラム」の一種といいうるので,表現行為のための利用は原則としてこれを認めなければならないと解される。

 

 

【考え方】

 

1 公共施設の利用基準

 

 本問施設の利用を不許可とする場合には,泉佐野市民会館事件最判と同様に,集会結社という表現の自由の規制にあたることに配慮し,人の生命,身体または財産に対する明白かつ現在の危険の存在が必要であるというべきである。

 

※ 泉佐野市民会館事件:「本件条例は,地方自治法244条の2第1項に基づき,条例7条の各号は,その利用を拒否するために必要とされる右の正当な理由を具体化したものである」。条例同条は「『公の秩序をみだすおそれがある場合』を本件会館の使用を許可してはならない事由として規定しているが,同号は,広義の表現を採っているとはいえ,右の趣旨からして,本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも,本件会館で集会が行われることによって,人の生命,身体又は財産が侵害され,公共の安全が損なわれる危険を回避し,防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり,その危険性の程度としては,単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず,明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要。客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合でなければならない」

 

※ 京都府中青年の家事件(本問と類似のケース):1審:(1)他の青少年が同性愛者の性的行為を目撃する可能性は極めて小さい。同性愛者の同室宿泊の事実から性的行為を他の青少年が想像するとも断定できず,仮に想像できたとしてもそれによって青少年の健全な育成が直ちに損なわれるとはいえない。(2)他の青少年によって原告らに対する嫌がらせ等が起きても,それが原告らによる利用を制限する理由とはなりえない。(3)憲法第21条,第26条,地方自治法第244条に鑑みると原告らは本件青年の家について利用権を有している。(4)同性愛者が青年の家における同室宿泊を拒否された場合には,別々の部屋に分かれて宿泊するのは個室数との関係で不可能であるから,その結果利用自体が不可能となる。これは男女が同室を拒否されても別々の部屋に分かれて集団で宿泊しうることと比べて著しく不利である。同性愛者の利用権を不当に奪う。(5)性的行為を行うという具体的な可能性がない以上,本件拒否処分は違法である。

 

 

2 LGBT団体と宿泊施設の利用

 

泉佐野の事件:政治集会

本件:LGBT団体の同室宿泊を含む合宿

 

Xらの言い分からすれば,LGBTの社会的認知を求めて行う研修集会の一環として合宿を行うのであるから,利用拒否は泉佐野市民会館事件と同様に原告らの集会の自由にかかわる事実だということになるのであろう。

 

・理由1

対してYは,青少年の健全育成の目的のために性行為の可能性のないよう施設は男女別の部屋とされているのであり,同性愛者の同室宿泊は,これを阻止しなければその目的は達成できないので,利用拒否は正当であると主張する(理由1)。このようなロジックであれば,LGBTに対する否定的メッセージは全くない。

 

これについてXは次のように反論する。成人から構成される本問XらのLGBT団体は,青年の家や教育委員会による教育目的の規制の対象とはならない。そもそも,同部屋にすると性行為をする可能性があるという公権力の想像の低俗さそのものが,動物的人間観であり,個人の人格的自律を否定するものである。

 

・理由2

また,Yは,青年の家における性的行為の連想が他の少年少女にとって教育上好ましくないと反論する(理由2)。

Y側の発想は,青年の家は青少年の教育目的の施設であるから,成人による公民館の利用の規制とは異なり,たとえ集会の自由といえども教育的見地から規制することが許される,というものである。

 

そのような教育上の不都合は,社会の受け止め方の問題である。とすると,関連性すらなく,必要最小限度の基準は当然満たさない。右地裁判決はそのような連想の有害性を否定した。

 

・理由3

さらにYは,原告らの宿泊によって他の団体とのトラブルが発生する可能性があるという(理由3)が,この点の可能性は明白かつ現在の危険が必要である。それにそもそも,トラブルの原因は他の団体が同性愛者に偏見を有するからであって,偏見に基づく挑発行為に対しては,その他団体の施設利用こそYは規制すべきである。