k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

民法問題解析:受領遅滞による危険の移転

 

【問題】

Bは6月1日に骨董商Aが陳列していた300万円の「青磁の壺」を見て,買うことにし,Aにその旨を述べて,明日現金を持ってくるから取っておくように依頼した。その後,Aは外出したが,その際に店番を頼んだ店員Dにうっかり「青磁の壺」が売れたことを伝えなかったところ,Dは,来店したCが「青磁の壺」を買いたいと申し出たのに承諾を与え,Cが明日現金を持ってくるまで壺を取っておくと約束してしまった。外出から戻ったAは,Dからその旨を聞いて困ったことになったと思ったが,壺は売却済みとして保管することにした。
ところで,BもCも6月2日には来店せず,6月3日となったが,この日にあった大地震のためにケースが倒れ,「青磁の壺」は壊れてしまった。そしてその直後に来店したBとCは,壊れたつぼを見て,代金支払を拒絶した。
ABCの法律関係を検討せよ。

 

【問題の所在】

 「青磁の壺」が破壊された原因は売主と買主の双方にとって責任のない大地震である。それゆえ,「青磁の壺」の破壊にもかかわらず,買主がなお代金の支払の義務を負担するかという危険負担が問題となる。

 

【解説】

1 特定物売買と危険負担

 A青磁の壺をまずBに売却する契約を締結したが,この売買契約は骨董たる青磁の壺を対象としているために,特定物売買であるといえる。その給付すべき特定物は大地震という契約両当事者に責任のない原因で契約成立後に滅失したのであるから,目的物の給付は不能となるものの,青磁の壺を引き渡す債務を負う売主Aは,給付不能について債務不履行責任を負わない(415参照)。ここに至り,反対給付である代金債務の帰趨が問題となる(対価危険)。

 特定物売買における危険負担については債権者主義が適用される(534Ⅰ)。物の引渡しがなくても代金を支払わねばならないという債権者主義は妥当性を書くという批判が多い。そのため同条項の縮小解釈が試みられる。しかしここではそのことには触れない。

 

2 二重売買と危険負担

 設問では,店員D青磁の壺を買いたいとのCの申出に承諾を与えた。店員Dは店にある商品の販売に関する権限を有するゆえに(商法第26条),このCD間の売買の効果はAに帰属する。その結果二重売買が生ずる。

 特定物を二重売買した場合の危険負担については,債務者主義(民法536条第1項)を採る解釈が通説である。債権者主義を制限しようとする傾向が強い上に,さらに二重売買では債権者主義を採ると対価を二重に受け取れることになるからである。

 Aが二重売買をした段階での危険負担は債権者主義であり,ABCに対する代金債権を失う。

 

3 受領遅滞と危険負担

 設問においては,取立債務にもかかわらず,BCともに期日に壺を受け取りに来なかった。受領拒絶であり,受領遅滞である(民法413条)。受領遅滞の効果として,危険負担は,債権者に移転する(債権者主義,民法536条第2項)。つまり,受領遅滞後の青磁の壺の破壊は,代金債務を消滅させないのである。

 本問では,二重売買との関連で,さらにこの処理を貫徹してよいかが問題となる。貫徹させるとすると結論としては,Aはいずれにも代金を請求できるとし,不真正連帯として処理するのが良いとなる。その場合はBCは求償関係に立つと解するのが相当である。