k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

【旧司法試験平成7年度 民法 第1問】不法投棄に関する法律関係

 飲食店経営者のAは、不要な業務用冷蔵庫を、知人Bに頼み破棄してもらうことにした。Aが、店の裏の空き地にその冷蔵庫を出しておいたところ、近所の住人Cも、不要になった冷蔵庫を破棄したいと思い、勝手にAの冷蔵庫のそばに自分の冷蔵庫を捨てた。Bは、トラックで空き地に乗り付け、2つの冷蔵庫を回収し、Dの所有する山林に不法投棄した。これを発見したDは、付近が子供達の遊び場になっており、2つの冷蔵庫に各5万円を費やし危険防止に必要な措置を講ずるとともに、A、Cをつきとめた。なお、Bの所在は不明である。
 DがA、Cに対しどのような請求ができるかについて論ぜよ。

 

 

第1 本件冷蔵庫の撤去について

 

1.所有権に基づく妨害排除請求権

 

Dは、A・Cに対して、本件山林の所有権に基づく妨害排除請求権に基づき、A・Cの費用において、本件冷蔵庫を撤去するようことを請求することがまず考えられる(民法第206条,第198条)。

 

Dは本件山林を所有している。本件冷蔵庫はA及びDの所有物である。本件冷蔵庫が本件山林に不法投棄されていることにより、Dの本件山林の使用が「妨害」されており,請求原因は認められる。

 

これに対しA・Cは、本件冷蔵庫の所有権は放棄しているため、A・Cは本件山林の使用収益権の行使を「妨害」していないと抗弁することが考えられる。

 

この点,物権は原則として各人が自由に処分できるが(民法第176条、第206条、第376条)、物権を有する者は、その物権から生ずる責任を負わなければならず(民法第717条)、利害関係を有する第三者が現れた場合には、第三者の権利を害してはならない(民法第374条第1項、第398条)。よって,物から生じた責任を放棄する目的での所有権放棄は「権利の濫用」として許されないと解される(民法第1条第3項)。

 

A・Cの本件冷蔵庫の所有権放棄は、Dへ対する責任を免れる目的のものである。よって、A・Cの抗弁は権利の濫用であり認められない。

 

 

2.妨害排除の費用負担

 

物権請求権は相手方に妨害除去を忍容させるにとどまる権利であるから、費用負担は請求者側にあるようにも思える。しかし、自力救済が禁止されている以上、物権的請求権は、相手方に行為を求める行為請求権と解すべきである。よって、物権的請求権行使に係る費用は行使された側が負担すると解するのが相当である。

 

※ この点,この理由づけだと,仮にA・Cが自己の所有物である冷蔵庫の返還請求権を行使した場合,当該請求の費用負担はDとなると解するのが論理的になってしまい,不都合であるようにも思われるかもしれないが,その辺りは,いったん捨てたものを返還しろというのは所有権に基づく請求を基礎付けないと理解するか,信義則上の禁反言の類推で請求を認めないとするかになると思われるので,本文のように解して不都合はない。

 

以上により、DのA・Cに対する請求は認容される。

 

 

第2 損害賠償請求について

 

※ 本件のA・Cの不法行為は共同不法行為となり,A・CはDの損害全額10万円(冷蔵庫1台あたり5万円 × 2台)についてそれぞれ賠償責任を負い,両者の損害賠償債務は不真正連帯債務となる(民法第719条第1項第1文)。共謀は不要であり客観的共同で共同不法行為は成立する(判例)。

 

1.DのAに対する損害賠償請求

 

Dは、Aに対して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、本件冷蔵庫の危険防止に必要な措置を講じるために費やした費用10万円の損害賠償請求を行うことが考えられる(民法第198条、第709条)。

 

Dは本件山林の「所有権」を「侵害」されている。

 

廃棄物処理の専門家でもない者に業務用冷蔵庫の廃棄を頼んだ場合、不法投棄が行われることは飲食店経営者であれば予見可能である。飲食店経営者は、業務用冷蔵庫の廃棄を他人に依頼する場合には、廃棄物処理の専門家等、不法投棄をするおそれのない者に依頼する業務上の注意義務があると解する。

 

Aは飲食店経営者である。Aは知人のBに本件冷蔵庫の廃棄を依頼している。本件では,Bが廃棄物処理業の許可を得ていることは認められず,許可があるとAが誤信していという事実も許可の取得の有無についてじゅうぶん確認したという事実も認められないので,Aには,「過失」が認められる。

 

Dには必要な安全措置を講じたために冷蔵庫2台で10万円の「損害」が生じている。

 

Aの過失がなければ、本件冷蔵庫が不法投棄されることもなかったといえる。本件冷蔵庫が不法投棄されなければ、Dが本件冷蔵庫に危険防止に必要な措置を講ずることもなかった。ゆえにAの過失行為とDの損害には因果関係が認められる。

 

以上より、AのDに対する損害賠償請求は認容される。

 

 

2.DのCに対する損害賠償請求

 

DはCに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、本件冷蔵庫の危険防止に必要な措置を講じるために費やした費用10万円の損害賠償請求を行うことが考えられる(民法第709条)。

 

Dは本件山林の「所有権」を「侵害」されている。Cは不法に本件冷蔵庫を廃棄しており,過失が認められる。Dには冷蔵庫2台で10万円の「損害」が生じており、Cの行為がなければ、かかる損害は生じていなかったといえるし,その因果関係・損害も予見可能な範囲である。よって,Dの行為とCの損害には因果関係が認められる。

 

よって不法行為が成立し,DのCに対する請求は認容される。