k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

公共施設における表現規制(旧司法試験 憲法 平成8年度第1問)

問題 

 団体Aが、講演会を開催するためY市の設置・管理する市民会館の使用の許可を申請したところ、Y市長は、団体Aの活動に反対している他の団体が右講演会の開催を実力で妨害しようとして市民会館の周辺に押しかけ、これによって周辺の交通が混乱し市民生活の平穏が害されるおそれがあるとして、団体Aの申請を不許可とする処分をした。
 また、団体Bが、集会のために上記市民会館の使用の許可を申請したところ、市民会館の使用目的がY市の予定している廃棄物処理施設の建設を実力で阻止するための決起集会を開催するものであることが判明したので、Y市長は、団体の申請を不許可とする処分をした。
 上の各事例における憲法上の問題点。

 

※ 関連テーマ

onlythegoodyoung.hatenablog.com

 

 

問題の整理

 

設問前段

設問後段

原告

団体A

団体B

被告

Y市

Y市

訴訟物

市民会館使用不許可処分の取消し

損害賠償請求

市民会館使用不許可処分の取消し

損害賠償請求

被告の行為

市民会館使用不許可処分

市民会館使用不許可処分

被告の行為の目的

団体Aの活動に反対している他の団体が団体Aの講演会の開催を実力で妨害しようとして市民会館の周辺に押しかけ、交通の混乱や生活の平穏が害される恐れがあるため

団体Bが廃棄物処理施設の建設反対の決起集会を開催しようとしており、それが施設の建設を実力で阻止するためのものであるため

 

回答

 

・訴訟要件

行政処分取消訴訟の出訴要件・当事者適格(行政事件訴訟法)はOK。

本案の取消しは法令・憲法適合性による。

 賠償請求の訴訟要件・当事者適格(国家賠償法民法行政事件訴訟法)はOK。本案の賠償は権利侵害・違法性・損害・因果関係如何、違法性は法令・憲法適合性による。

 

・市民会館の使用許可に関しての裁量(市の財産の使用・収益・処分)(公物法)

基本的に市の所有物は、財産の維持・管理に責任と利害を持つ「市」が、その利用に関してルールを決めて運用できる。また、ルールの適用の前提となる事実認定もまずもって許可権者及びその組織がその仕事として行い、第三者がチェックするのはその判断過程の適切さに限るべき。ただし、より上位の規範である憲法や国の特別な定めがある場合にはそれに従う。平等原則に違反するような狙い撃ちでの規制の禁止、基本的人権保障の観点から政策的に使用を認めていく方向の場合、法令で定められている場合(地方自治法)である。

 

・許可処分の要件

審査内容・どういう場合に自由裁量・どういう場合に許可しなければならない(羈束裁量)かが問題となる。

この点,地方自治法第244条1項では,「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設を設けるものとする。」と規定されている。

ここでいう「住民の福祉を増進」には,表現の自由・集会の自由・その他一般的自由の保障することも含まれると解される。「普通地方公共団体は、正当な理由がないかぎり、住民が公の施設を利用することを拒んではならず、住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取り扱いをしてはならない。」(地方自治法第244条第2項・第3項)

 

・これに関連する憲法上の要請が何かあるか(合憲限定解釈や適用違憲の問題)

集会の用に供する「公の施設」における「正当な理由」について判例では,他の基本的人権が損なわれる場合には,特別に裁量の範囲が狭くなる判断をしている。なお,集会の自由の保障根拠は,憲法第21条第1項である。

 

・設問前段・設問後段の比較(被告の行為の目的でしか区別がない)

市の行為の目的上、もし害悪の発生が、表現内容・思想内容そのものから生じるため、規制の必要が生じるとされた場合(扇動やレッドバージなどの危険思想処罰やわいせつ)、人の思想の内容及びその表現を受け取った人の内面の心象形成に対して憶測を加えて判断する必要があり,類型的に,特定の表現を選別して行政に不都合な表現、特定の道徳や生き方を押し付けることがありえ,憲法第21条の趣旨などに照らして,そのような公権力の恣意に十分警戒すべきというのが憲法の合理的解釈である。ここでは,明白かつ現在の危険が認められない限り違憲違法となるという基準により,そのような公権力による特定の表現の恣意的狙い撃ちをあぶり出し,禁止するのが妥当と解される。

他方、表現手段が危険な態様によるなど、表現内容と直接的には関わらないものである場合、特定の表現への狙い撃ちかどうかは客観的に判断でき,裁判所による適正手続の下、客観的に正しく,不許可根拠があると認定される場合は、違法の問題は生じない。

施設の破壊や集会後飛び出して危険なデモ行進や破壊活動を行うおそれがあるなど、客観的に重大な危険性が認められれば不許可もOK(明白かつ現在の危険の立証までは要しない)。なお、その判断の際には、当該団体の性質や平素の活動内容や事件の有無等、思想内容に極力関わらない範囲で、過去の実績などの客観的な事実から、今後予見される集会の態様・危険性の有無を客観的に審査することが裁判所にも求められる。

また、表現者自身が全く危険な態様での表現を企図しておらず、危険が生じない場合は必ず許可しなければならない。 付言すると、第三者による妨害が懸念される場合でも、基本的には自治体等が警察力の行使で妨害を排除する責務を負う。ただし、その妨害が表現者自身の過去の行動・言動からことさらに第三者からの妨害行為を誘発しているなどの特別の事情がある場合は、当該集会のための施設利用の許可が出ないこともありうる。

 

・本問の帰結

設問前段 違憲違法 (法令の根拠を有しない処分)

設問後段 合憲適法

※ あてはめは各自のご推測にお任せします。

 

 

本的には,自分の憲法解釈は判例と,下記の解説書・基本書に依拠しています。通説とされる芦部憲法体系から判例を解釈しようとするのは実は結構困難があります。

 

※ 正義論まで踏まえており,最も影響を受けたもの  

憲法 (新法学ライブラリ)

憲法 (新法学ライブラリ)

 

 

※ きちんとした法解釈論で最高裁判事にまでなった学者

法律学講座双書 憲法

法律学講座双書 憲法

 

 

※ 判例及び調査官解説で構築した,実務家による憲法解説

憲法の地図: 条文と判例から学ぶ

憲法の地図: 条文と判例から学ぶ

 

 

 

※ 実務に通用する憲法解釈演習本。実はドイツの議論・枠組みまでカバーされている地味だがすごい本。

憲法解釈演習(人権・統治機構)【第2版】

憲法解釈演習(人権・統治機構)【第2版】

 

 

※ 最高裁調査官による解説を手軽に

最高裁時の判例―平成元年~平成14年 (1) (ジュリスト増刊)

最高裁時の判例―平成元年~平成14年 (1) (ジュリスト増刊)