k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

経営者が重視する財務指標(ROEとROIC)

ROEという財務指標が注目を浴びている。これとは微妙に異なる指標としてROICがある。今回はこれについて解説する。

 

 

1.ROE自己資本利益率

 

 ROEの計算は実にシンプルであり,自己資本が分母,当期純利益が分子の割り算。上場企業であれば,ROEは8%以上でなければならないというのが投資家の考え方であり、 これが今では経営者にも広く受け入れられつつある。ROEは簡単に言えば株主が拠出した資金に対してどれだけの利益を生み出すのかという「元手」と「見返り」の関係。そのため,株主は高水準のROEを企業に求めることになる。

 

 ここで非公開中小企業を考えると,経営者が同時に株主でもあるというファミリー企業が多いと考えられる。一族が株主として過去に拠出した資金に対して高い利益を上げるのは当然のことであり、 ROEが経営指標として適したものであるということになり,非公開中小企業もROEの改善を経営者として重視するのは有効適切である。

 

 

2.ROIC(投下資本利益率)

 

 これとは別の観点をもたらすものとして,ROICである。単純化すると、 ROICは,事業に活用する資産が分母,営業利益が分子の割り算となりる。事業に活用する資産とは,例えば,製造設備や運転資金。遊休資産や余剰現金などは事業に活用しないため、計算には反映しない。

 

 ROICは、 事業資産からいかに効率的に利益を生み出せるのかを測定する指標である。いわば,資産という「元手」からどれだけ多くの「見返り」を得ることができるのか。同じ「元手」であっても,ROEの[元手」が資本であることとは対照的である。ROICは資本効率性ではなく、 資産効率性を測定する指標なのである。

 

 

3.比較


 仮にある企業が,ROEではなくROICを重視する場合,その背後にあるポリシーは,良い経営の結果として株主の要求を満たせばよいというポリシーである。経営者と同時に株主であっても、 まずは経営者としての自分を優先し,経営の結果として株主としての自分を満足させるべきだということである。

 

 実際,株主としての自分を優先した場合、 ROEが測定する資本効率性を重視することになるが、 資本からより多くの利益を生み出すというのはイメージが困難であり,具体的に何をすべきかがよくわからない。お金を活かしてさらにお金を稼ぐというのは投資家の考え方であるため,経営者にとって理解しにくい。

 

 一方,経営者としての自分を優先すれば、 ROICという資産効率性を重視することになるが,事業用資産からより多くの利益を生み出すというのは理解しやすい。製造設備をより効率的に活用しより多くの製品を生み出したり、販売拠点で
より多くの製品やサー ビスを販売したりすればよい。つまり,経営上当たり前のことを当たり前に実践すれば,ROICは改善される。

 

 

4.ROEとROICの架橋

 

 資産効率性が改善されると資本効率性も同時に改善されるという因果関係が存在する。このように経営者としての自分を優先することにより、 経営者としての自分だけでなく株主としての自分も満足する結果となる。

 

 経営には近道はない。世の中には数多くの複雑な経営理論が存在するが、「 経営とはいい製品をつくって、 それを適正な利益を取って販売し、 集金を厳格にやる。そういうことをそのとおりにやればいいわけである」と松下幸之助は述べている。