k's point of view

経営の現場で,サラリーマンとフリーランスの境目にいる者です。旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログです。その他ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介もいろいろ記載していく予定です。最近は映画についての感想も縷々書いています。

【民法】抵当権の実行をめぐる冒険(旧司法試験・民法・平成9年度・第1問)

今週もハードな1週間が終わりました。寝る前に落ち着いて一本書いてみます。

 

【問題】

 Aは,その所有する甲土地にBのために抵当権を設定して,その旨の登記をした後,Cに対し,甲土地を建物所有目的で期間を30年と定めて賃貸した。Cは,甲土地上に乙建物を建築し,乙建物にDのために抵当権を設定して,その旨の登記をした。その後,Cは,甲土地上の庭先に自家用車用のカーポート(屋根とその支柱だけから成り、コンクリートで土地に固定された駐車設備)を設置した。右の事案について,次の問に答えよ(なお,各問いは,独立した問いである。)。

1.Bの抵当権が実行され,Eが競落した場合,乙建物及びカーポートをめぐるEC間の法律関係について論ぜよ。

2.Dの抵当権が実行され,Fが競落した場合,乙建物及びカーポートをめぐるFA間の法律関係について論ぜよ。

 

 

f:id:q07025a:20160701232917j:image

 (関係図・答案構成)

 

 

【問題の整理】

カーポートは権限に基づき設置しているので,土地に附合しないと解するアプローチです(民法第242条但書き)。また,民事執行法借地借家法を丁寧にフォローしていくよう心がけて作成しています。ロジカルに書いていくと民法第370条の付加一体物は出てきません。民法第87条第2項で十分だからです。というのは,抵当権の効力が及んでいようがいまいが,実行の効力が従物たるカーポートに及ぶため。付加一体物というあいまいな概念に依拠する必要がなく,明確な条文の根拠に基づいており,争いの少なく手堅い論証となっていると思います。

 

【回答】

〔小問1 乙建物及びカーポートをめぐるEC間の関係〕

 EはCに対し,乙建物及びカーポートの収去並びに甲土地の明渡請求をすることが考えられる。

1.甲土地はもとA所有で,これに設定されたBの抵当権の実行により,Eに譲渡された(Eの代金納付時にEは所有権を取得(民事執行法第188条・第79条))。乙建物はCが建築したものであり,C所有である。カーポートについては,乙建物の常用に供するために,Cの所有に属するカーポートを乙建物に付属させたものであり,乙建物の従物である(民法第87条第1項)。また,カーポートはコンクリートで土地に固定されており,土地に符合するかが問題になるが,CはAにより設定された建物所有目的の賃借権により設置されたものであり,甲土地所有者であるAに帰属するものではなく,Cにその所有権が留保される(民法第242条但書き)。以上から,乙建物及びカーポート双方について,収去並びに土地明渡請求の請求原因が認められる。

 Cの抗弁であるが,甲土地の賃借権が設定されたのはAのBに対する抵当権設定登記後なので,Cの賃借権の抗弁(民法第601条)は認められない(民事執行法第188条・第59条2項)。

 よって、Eは建物収去・明渡しを請求できる。ただし、Cには6か月の猶予期間が認められる(民法第395条)。

2.なお、EはCが賃借しつづけることを望む場合には、Cの賃借権に対抗力を与えることができる(民法第387条1項)。

 

〔小問2 乙建物及びカーポートをめぐるFA間の法律関係〕

 AはFに対し,乙建物及びカーポートの収去並びに甲土地の明渡請求をすることが考えられる。

1.甲土地はA所有で,乙建物及びカーポートはC所有であったところ,これがFの競落によりF所有となっている。乙建物の抵当権実行の効力はその従物たるカーポートにも及び(民法第87条第2項),ともにF所有となる(民事執行法第188条・第79条)。以上から,乙建物及びカーポート双方について,収去並びに土地明渡請求の請求原因が認められる。

2.Fの抗弁であるが,乙建物及びカーポートの占有権原として,CのAに対する土地賃借権の設定及び当該賃借権の承継取得を主張することになる。CのAに対する土地賃借権の設定には争いはない。また,当該賃借権は乙建物の従たる権利であり,従物に準じ,主物・主たる権利たる乙建物の抵当権の実行によりFに移転する(民事執行法第188条・第79条,民法第87条第2項。判例結論同旨)。

 Aの再抗弁であるが,当該賃借権の無断譲渡による解除を主張していくことになる(民法第612条第1項及び第2項)。

 Fの再再抗弁であるが,譲渡を承諾しても土地所有者に不利益になる恐れがないにもかかわらず,承諾をしないような場合,裁判所は,承諾に代わる許可を与えることができ,裁判所が承諾に代わる許可を与えた場合には、賃借権を対抗できる(借地借家法20条,民法第612条第1項反対解釈)。

3.また,Fとしては上記とは別の抗弁として,借地借家法第14条に基づき,建物買取請求権を行使し,建物を時価で買い取るように請求し(形成権の行使となる。),乙建物及びその従物のカーポートがAの所有に帰し(民法第555条),建物及びカーポートの収去義務を免れることができる。また,この場合,Aとしては訴えを変更して建物明渡請求を予備的に請求していくことになるが(民事訴訟法第143条第1項本文),建物代金請求権を被保全債権として留置権を行使し,本件土地の明渡しを拒否することができると解される(民法第295条第1項本文)。また,Fとしては,乙建物及びカーポートの代金債権を訴訟内で請求し,引換給付の判決を求めることができる(判例)。

いかがでしょうか。論点主義の答案とは一味もふた味も違うのではないでしょうか。

 

【参考文献】

 我妻先生の本は本当に良いです。

 

新訂 物権法 (民法講義 2)

新訂 物権法 (民法講義 2)

 

 

 

新訂 担保物権法 (民法講義 3)

新訂 担保物権法 (民法講義 3)