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k's point of view

経営の現場で,サラリーマンとフリーランスの境目にいる者です。旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログです。その他ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介もいろいろ記載していく予定です。最近は映画についての感想も縷々書いています。

【民法】譲渡担保・取得時効・賃借権の物権的効力(旧司法試験 民法 平成4年度第1問)

民法

久々に面白いと思える問題でした。企業法務の実務をやってきてもう一度振り返ると,リアリティをもって考えることができますね。良問です。

 

【問題】

 Aは、Bに対して負う貸金債務を担保するため、自己所有の建物をBに譲渡して所有権移転登記をしたが、引き続き建物を占有していた。ところが、Aが期限に債務を弁済しなかったので、BはAに対し、建物の評価額から被担保債権額を控除した残額を提供し、建物の明渡しを求めたが、Aはこれに応じなかった。その後、AはBに対し、債務の弁済の提供をした上、建物をCに賃貸した。Cは、Aを建物所有者と信じて、長期間にわたりAに賃料を支払ってきたが、この間に、建物はBからDに譲渡され、その旨の登記がされた。 この場合における建物をめぐるAD間、CD間の法律関係について述べよ。

 

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【回答】

第1.AD間の法律関係

1.結論

 DはBから本件建物の所有権を承継取得している。Aは,Bに対する弁済の提供以後自主占有を開始しているので,その時点から20年を経過していれば本件建物の所有権を原始取得する。20年経過前にDが本件建物を取得している場合は,登記なしにAは所有権をDに対抗できる。20年経過後にDが本件建物を取得している場合は,登記のないAは所有権をDに対抗できない。

 

2.理由(Dの承継取得)

 まず,Aは貸金債権を担保するために本件建物をBに譲渡している。詳細不明だが,当該譲渡担保設定契約の当事者の合理的な意思解釈として,
①担保権を設定する
②所有権移転登記をして公示する(実質は担保権だが所有権移転登記で代替)
③担保権実行まではAが占有し使用収益できる
④被担保債権(貸金債権)不払いとなれば,Bは清算金を提供することにより,Bに確定的に所有権が帰属する(帰属清算)
⑤帰属清算後は,Aは本件建物を明け渡さなければならない
⑥Aが清算金を受領しないときは,清算金支払債務は期限の定めのない債務となり,Bは請求を受けた時から遅滞の責任を負う(民法第412条)
⑦一旦Bに帰属が確定した後は,AはBの承諾がない限り取戻しできない。
というのが概要考えられる。本件では,Bは譲渡担保契約の手続きに則って清算をしており,既にBに確定的に所有権が帰属しており,所有権の公示にも欠けるところはない。そのうえで,BはDへ適法に本件建物を譲渡しており,Dは所有権を取得している(民法第555条)。

 

3.理由(Aの時効取得)

 上記のように,譲渡担保契約及び清算の実行によりAは所有権を喪失しているが,長期間の占有により時効取得成立の余地はある。本件で時効の起算点がいつかが問題となるが,まず,担保権設定後はAの占有は他主占有となり,時効は開始されない(民法第162条第1項「所有の意思」がない。)。本件では,AがBに借入債務の弁済の提供をして以降,「自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し」たことにより,占有の性質が変更されたとみるべきである(民法第185条)。なお,本件は,Bに確定的に所有権が帰属しており,Aは善意占有とはならない(弁済の提供により取戻しができたとAが考えたとしてもそれは法の不知というものである。)。

 ここから長期間Cに賃貸していたということでAは代理占有を行っており(民法第181条),占有は継続している(と推定される。民法第186条第2項)。20年経過時に時効取得の要件を満たす(民法第162条)。

 ただし,Aが時効取得をDに登記なしに対抗できるのは,時効完成時にすでにDが本件建物を所有していた場合に限る(物権変動の当事者であり,民法177条の「第三者」に当たらない。)。そうではなく時効完成時はBが本件建物を所有しており,時効完成後にDがBから所有権を取得している場合は,Bを起点とする二十譲渡類似の関係に立つため,Aは登記なく時効取得を第三者Dに対抗できず(民法第177条),登記を有しているDが本件建物を確定的に取得することになる。

 

第2.CD間の法律関係

1.結論

 Aが本件建物を時効取得しDに対抗できる場合,Dは無権利者であり,CD間は何ら法律関係を生じない。CはAの取得時効を援用できる(民法第145条「当事者」とは,時効により直接に利益を受ける者,すなわち取得時効により権利を取得する者をいう(判例))。

 A本件建物を時効取得していない場合は,無権利者からの賃借であり,CはDに対し賃借権を主張する基礎を有しないが,Cが10年間賃借を継続していれば,Cは賃借権をDに対抗できる。なお,CがDに賃借権を対抗する場合,Dは賃貸人の地位に立つことになる(判例)。

 Aが本件建物を時効取得するもののDに対抗できない場合,Aから賃借権の設定を受けたCはDと対抗関係に立ち,Cが建物の引渡しをDの登記より先に受けているので,Cが賃借権をDに対抗できる(民法第177条,借地借家法第31条第1項)。上記同様CはAの取得時効を援用できる。以下,Cによる賃借権の時効取得に関して説明する。

 

2.理由(Cによる賃借権の時効取得)

 不動産賃借権は物権的な効力を認められている。民法第605条及び借地借家法第31条の対抗力(第三者への対抗)はその表れである。このように,不動産を目的とする賃借権は一般の債権とは異なり物権的な効力を有していることから,賃借権の時効取得は認められると解すべきである。他方,真の権利者の時効中断の機会を保障する必要もあるため,①継続的な用益という外形的事実の存在,②賃借の意思に基づくことが客観的に表明されていることを要件とすべきである(判例)。

 本問においては,Cは①建物を継続して用益し(継続性は推定される。民法第186条第2項),②賃貸借契約に基づき占有開始しており賃借の意思に基づくことが客観的に表明されている。また,Cは善意であると推定される(民法186条1項)。

 よって賃貸借開始時から10年が経過した時に賃借権を時効取得し,引渡によって対抗力も付与されているので,Cは,Dに賃借権(使用収益権,民法第601条)を対抗できる。

 なお,時効完成時にDが取得していたか否かはCが対抗要件を具備しておりまた賃借権と所有権が問題となっている本件では,問題とならないと考えられる。

 

 

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