読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

k's point of view

経営の現場で,サラリーマンとフリーランスの境目にいる者です。旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログです。その他ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介もいろいろ記載していく予定です。最近は映画についての感想も縷々書いています。

【憲法】文化祭の発表内容と宗教的中立性(旧司法試験 憲法 平成10年度第1問)

 

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

【問題】

公立A高校で文化祭を開催するに当たり、生徒からの研究発表を募ったところ、キリスト教のある宗派を信仰している生徒Xらが、その宗派の成立と発展に関する研究発表を行いたいと応募した。これに対して、校長Yは、学校行事で特定の宗教に関する宗教活動を支援することは、公立学校における宗教的中立性の原則に違反することになるという理由で、Xらの研究発表を認めなかった。
右の事例におけるYの措置について、憲法上の問題点を指摘して論ぜよ。

 

 

【問題点の整理】

原告

生徒X

被告

公立A高校(校長Y)

訴訟物

損害賠償請求

被告の行為

文化祭における宗教的研究発表の禁止

被告の行為の目的

キリスト教の特定の宗派の成立と発展に関する研究発表が、公立学校における宗教的中立性の原則に違反するという理由

 

条文を見ておきましょうか。

 

憲法第20条第3項

 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 

 

【回答】

高校における施設の利用はどういう権利に基づくか?

・公立学校は公用物。一般の用に供された公共用物とは違う。

地方自治法のような「正当な理由」がない限りその利用を拒めないというような「梯子」になる規定もない。

・学校教育法5条 学校の設置者は、その設置する学校を管理する。

・学校教育法50条 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。

・学校教育法51条 豊かな人間性/創造性/豊かな身体 国家及び社会の形成者として必要な資質

 使命の自覚 将来の進路の決定 一般教養 専門知識 専門技術

 個性の確立 社会への理解と健全な批判力 社会の発展に寄与する態度

・学校教育法62条・31条 ボランティア活動、自然体験活動その他の体験活動の充実に努める

・学校教育法11条 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

・校長の包括的規律権

・法的規律があいまい(明確な法律の根拠や規制の下行われる行為というものがあまりない)

 

違法性

被侵害利益の種類と侵害行為の態様との相関関係(我妻)

・権利侵害

憲法23条 学問の自由(研究、研究発表 当然、宗教も学問の対象) 学校では最大限保証されなければならない

・行為態様

宗教的中立性の概念とは

  1. フランス的 〔宗教排除と言う意味での宗教的中立性〕全員が同じルールに服するためには、地球がどうやってできたか、あるいは、人間はなぜ死んでいくのか、死んだらどうなるのか、とりあえず、無宗教的な、反宗教的な自然科学の教えるところを頭に叩き込む必要がある。ex. ブルカ禁止
  2. プルラリズム 〔インクルードしていく方向〕多元的な価値観(宗教的寛容含む)というものを教えるのが学校の役割。少数派(の宗教)に対して多数派が自分たちの偏見を押し付ける危険があることを気付かせ、教化するところ。ex. マイノリティに対するアファーマティブアクション
  3. 判例 包括的規律権の下、特別な配慮をする必要は原則としてないと考える。ただし、それによる不利益がシビアでかつ代替手段をとっても当該教科上の本質的な目的を害しない場合は、配慮義務がある。それは目的が世俗的で効果が特定の宗教の援助・助長・促進又は圧迫・干渉にならないため、政教分離原則にも反しない。

判例に基づくと、特にシビアな影響がない(公民館の一室でも借りて発表すればよい)ので学校の行為としてはそれほど非難されるものではない、ということになりそう。

(反論1)校長の行為が特定の宗教のみに対して冷淡な対応(一貫性がない。例えば仏教の歴史の展示はOKしている)ということが主張立証できれば、校長の好き嫌いで狙い撃ち的に規制していることが明らかであり、14条の観点等からチャンスあり。「切り札としての人権論」特定の考え方を公権力が誤っていると認定して規制する、シビアな人権侵害事例となる。

(反論2)学校教育法の考える教育論と文化祭の位置付けを掘り下げていけば、体育の剣道授業の神戸高専事件との違いが出せ、少なくとも「文化」祭の場面においては、文化というものをクロースアップするところであり、多元的な文化(宗教的文化含む)を学生が各自の創造性で発信していくことがその本質であり、校長の行為はそのこと(教育人の本分)を忘れたかなり悪性の高い行為ということも可能。文化的行事については、学習指導要領5章2で、次のように示している。「平素の学習活動の成果を総合的に活かし、その向上の意欲をいっそう高めたり、文化や芸術に親しんだりする活動をすること」

 

訴訟形式は?

・cf. 原級留置処分や退学処分 → 処分性あり 取消訴訟

・文化祭における宗教的研究発表の禁止行為 → 処分性なし(法的効果なし)、内部的問題(部分社会) ex. 富山大学単位認定

・損害賠償請求(慰謝料請求) 国家賠償法1条

 

 

民法概論 4 -債権各論 補訂版

民法概論 4 -債権各論 補訂版

 

 

 

憲法 (新法学ライブラリ)

憲法 (新法学ライブラリ)