k's point of view

経営の現場で,サラリーマンとフリーランスの境目にいる者です。旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログです。その他ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介もいろいろ記載していく予定です。最近は映画についての感想も縷々書いています。

【憲法】法律と条例(旧司法試験 憲法 昭和59年度第2問)

【問題】

条例と法律との関係における諸論点について、政令と法律との関係の場合と対比しながら、説明せよ。

 

【問題点の整理】

 

1.設問前段

2.設問後段(あくまでも比較のため)

原告

国(法律制定者)

国会(法律制定者)

被告

地方公共団体(条例制定者)

内閣(政令制定者)

訴訟物・訴因

条例の無効確認

政令の無効確認

被告の行為

①    上乗せ条例、横出し条例

②    憲法上の法律留保事項(租税、罪刑、刑事手続、財産権)

①    上乗せ政令、横だし政令

②    憲法上の法律留保事項(租税、罪刑)

争点

地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる(憲法94条)。

→「法律の範囲内」とは。

法令の趣旨と矛盾して個人の権利まで考量した立法者の裁定を否定することにならないか。

一方で、地域性を考慮した条例固有の事項があるはずでそれをどのように確保するか。

内閣は、この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定する事務を行う。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない(憲法73条6号)。

→「法律の規定を実施するため」とは。

 

【回答】

1.「法律の範囲内」とは。

公害規制において、各地方公共団体が、法律で定める規制基準よりも厳しい基準を定める「上乗せ条例」や、法律の規制対象以外の事項について規制を行う「横出し条例」を定める場合が多くみられた。

法人や個人の権利・自由(財産権・営業の自由、表現の自由等)を条例で法律以上に制限することになる場合は、慎重な考慮が必要。一方、住民自治の観点からは、当該地域の固有の事情や自治体相互の多様性を織り込んでおくべき。

結局、第三者機関である裁判所が司法権の範囲で、法律と条例の趣旨を比較し、矛盾の有無を審査すると言う形で、事案ごとに解決していくしかない。その際、法律が規制の裏面として保証している人権の特別の制約になる場合には、その理由が厳密に審査されなければならず、当該条例の真の目的の確定をした上で、①高度の必要性、②やむをえない範囲の規制、であること等を厳格に判断することになる。

1-2.政令の場合の、法律と政令の規制関係

具体的な委任がある場合や、法律で規定しきれない細目的事項に関してのみ許される。

2.地方公共団体固有の事項とは。

一の地方公共団体のみに適用される特別法は、国会は、住民の過半数の同意の手続を経なければ制定できない(憲法95条。国会単独立法(憲法41条)の例外)。沖縄における公用地暫定使用法がその例となりうる。

このような特定の地方公共団体に適用される時効に関しては、基本的に地方公共団体固有の事項として、原則としては当該団体が条例で制定すべき。ただし、沖縄の場合は日米安全保障のスキームの文脈では、国防上の理由もあり、この場合は、憲法95条のような「特別法」→「住民の過半数の同意」の手続が望ましい。

2-2.政令固有の事項とは

細目的事項に限る(委任命令、執行命令)。省令よりは制定手続が慎重で民主的コントロールも及んでいるので、その点は考慮して一定程度の判断は任せてよいと考えられる。

3.法律の留保事項を条例で規定することができるか

できる。ただし、法律の委任がある場合に限る。委任のないものや委任の範囲を超えるものは憲法94条により無効。

この点に関しての憲法の書きぶりは一貫しており、これは国会が立法権を独占していることとあいまって、国民の同意の下、特に国民自身にCrucialな租税、刑罰、刑事手続、財産権について、行政の恣意から守るだけではなく、法律以外の形式の法規範にも委ねず、国民の権利保障の実質化を図ろうとして趣旨であることは明確である。

ただし、法律の委任がある場合は、国民自身が敢えてその権限を委譲しているのであるから、これまでもパターナリスティックに否定する必要はない。

3-2.政令の場合

憲法の規定を実施するため」とも読め、また、政令制定の手続は大臣全員の連署が必要など、かなり手厚いが、国会単独立法の原則(憲法41条)からすれば、これは政令も憲法に適合していなければいけないという程度の意味に読むべきで、法律の留保事項は政令では制定できない。