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k's point of view

経営の現場で,サラリーマンとフリーランスの境目にいる者です。旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログです。その他ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介もいろいろ記載していく予定です。最近は映画についての感想も縷々書いています。

【憲法】政教分離(旧司法試験 憲法 平成4年度第1問)

【問題】

A市は、市営汚水処理場建設について地元住民の理解を得るために、建設予定地区にあって、四季の祭りを通じて鎮守様として親しまれ、地元住民多数が氏子となっている神社(宗教法人)境内の社殿に通じる未舗装の参道を、2倍に拡幅して舗装し、工事費用として100万円を支出した。なお、この神社の社殿に隣接する社務所は、平素から地区住民の集会場としても使用されていた。A市の右の措置について、憲法上の問題点を挙げて論ぜよ。

 

【問題の整理】

・利益供与的
神道信者達の宗教的感情を刺激し満足させるような施策
・境内の参道の拡幅と舗装→私有地内、神道宗教法人(特定の宗教団体)への利益供与
・一方、社務所は公共用物的側面も果たしていた。

公金支出の違法性

政教分離原則違反

憲法89条 公金は、宗教上の組織の使用、便益若しくは維持のためこれを支出してはならない。

(趣旨) 戦前、神社神道が国教として優遇された結果、他の宗教(キリスト教など)が弾圧され、信教の自由が妨げられたこと、及び、その教義が国家主義軍国主義の精神的支柱となって政治部門による国民支配の道具となり、悲惨な戦争をもたらしたことの反省から、公金支出や宗教教育等あらゆる側面から、国家・地方公共団体と宗教団体や特定の宗教との分離が図られている。

論点
今回の支出は宗教上の組織の使用、便益若しくは維持のための支出かどうか

その他 
憲法20条 特権付与や祝典・儀式や宗教教育・宗教的活動とまではいえないので、今回の事案には適さない。

 

 【回答】

法的構造

1.政教分離原則 

  構成要件 「宗教団体」に対する「公金の支出」

  あてはめ 神道宗教法人=宗教団体 その私有地内の未舗装の参道を市の金で幅二倍、舗装の道路にしており、「公金の支出」にあたる。

2.公共の福祉からの調整

①    正当な国家目的達成のため

②    必要最小限殿手段であり、かつ、

③    得られる利益と失われる利益が均衡している

場合には、公共の福祉(憲法12条、13条)の観点から、例外的に許容される(この場合は、「特定の宗教を援助・助長・促進又は圧迫・干渉する場合に該当しない」と言い換えることもできる。)。

ex. 宗教的弱者の保護(アイヌの土着信仰)や、文化財・観光資源保護目的(伊勢神宮縄文杉

(あてはめ)

①    市営汚水処理場建設について地元住民の理解を得るためであり、それ自体は正当な国家目的達成のためといえる

②    100万円という金額は合理的な範囲内であり、政治の裁量の範囲内のため、必要最小限度といえる

③    信者らの信仰に便宜を図り、歓心を買うためになされた行為と解され、特定の宗教と市がつながっているようなシンボリックな意味合いがあり、それが国家と宗教の強固なつながりに至る危険には十分留意すべきだが、神道信者以外も使用すると見られる集会場としても使用されている社務所の利用の利便向上を図るという側面も並存していることから、宗教的色彩はかなり緩和されている。地元住民に便宜を与え、”not in my backyard”で誰もが嫌がる汚水処理場施設の場所を確保することを達成することができるのであれば、まだ得られる利益が失われる利益を上回っていると言うべき。

3.結論

以上より、Aの行為を総合的に判断すると、特定の宗教を援助・助長・促進又は圧迫・干渉する場合に該当するとは言えず、国家と宗教の係わり合いとして相当とされる限度を超えているとはいえないので、政教分離原則に反せず、違憲違法ではない。原告の請求には理由がない。