k's point of view

経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

刑法の緊急避難とカニバリズムの事例(ミニョネット号事件)

事例

1884年
7月5日、イギリスからオーストラリアに向けて航行していたイギリス船籍ヨットミニョネット号 (Mignonette) は、喜望峰から1600マイル(約1800キロメートル)離れた公海上で難破した。船長、船員2人、給仕の少年の合計4人の乗組員は救命艇で脱出に成功したが、艇内にはカブ缶詰2個以外食料が搭載されておらず、雨水を採取したり漂流5日目に捕まえたウミガメなどを食い繋ぐも漂流18日目には完全に底をついた。19日目、船長は、くじ引きで仲間のためにその身を捧げるものを決めようとしたが、船員の1人が反対した為中止された。しかし20日目、船員の中で家族もなく年少者であった給仕のリチャード・パーカー(17歳)が渇きのあまり海水を飲んで虚脱状態に陥った。船長は彼を殺害、で渇きを癒し、死体を残った3人の食料にしたのである。

そのため「カルネアデスの板」に見られる緊急避難を適用した違法性の阻却が考えられたが、イギリス当局は起訴。最初の裁判の陪審員は違法性があるか否かを判断できないと評決したため、イギリス高等法院が緊急避難か否かを自ら判断することになった。この事案に対して、イギリス高等法院はこれを緊急避難と認めることは法律道徳から完全に乖離していて肯定できないとし、謀殺罪として死刑が宣告された。

しかし、世論は無罪が妥当との意見が多数であったため、当時の国家元首であったヴィクトリア女王から特赦され禁固6ヶ月に減刑された。
ミニョネット号事件 - Wikipedia

 

 

1 現在の危難

 現在の危難は急迫性と同様に解されるべきである。将来予想される不正の侵害を防ぐための行為は、自救行為として正当化を検討することになる。

 強要されて犯罪行為を行う場合に緊急避難が認められるか、という問題は、あまり議論されてこなかったが、オウム事件における強要による緊急避難の事例に過剰避難を認めた下級審判決を契機として注目を集めた。通説は、自然現象による危難と人の強制による危難を区別する理由はないと解する。

 

2 やむを得ずにした行為(法益の衝突状況)

 やむを得ずにした行為といえるためには、行った避難行為以外に危難を回避するヨリ侵害性の少ない手段がなかったという意味での補充性が必要である。他の手段で危難を回避できるのであれば、保全法益と侵害法益との間には真の衝突は存在していないから、緊急避難として違法性阻却を認める必要性がないからである。

 法益衝突状態は、社会的な判定基準を必要とする。生命対生命の場合に緊急避難の適用を否定するのは、事実としては法益衝突状態にあっても(「補充性」はある)、規範的に法益衝突状態が否定されるからである。この判断は「相当性を欠く」という言葉で表現される。もちろん、相当性を否定する場合には、その理由をできるだけ明らかにする必要がある。例えば、雨傘事例(金持ちAは、自分が着ていた高価な着物をにわか雨から守るために、粗末な服を着た貧乏人Bから傘を奪った、という事例)は、緊急避難が否定される事例として多くの論者によって受け入れられているが、その理由は何であろうか。傘が必要であれば、買うか借りるかするべきだからと思われる。雨傘事例においても、傘が門前に立てかけてあって持ち主が不在であれば、傘を無断で持っていくことが許される場合もあろう。結論を左右するものは、規範的に見て法益衝突状態が生じているかという判断である。

 強制採血事例(医師Aは、すぐに手術をしなければ助からないBの生命を救うために、ちょうど定期健診にやってきたCから、その意思に反して採血した、という事例)は、相当性を肯定してよい。容易に再生する血液は、人格の本質的要素とまではいえないからである。

 相当性を要求する見解からは、自招危難に対する緊急避難が認められるかどうかは、相当性の見地から個別具体的に判断されることになる。

 A 意図的に危難を招いてその機会を利用して他人の法益を侵害しようとした場合

 判例では、危難の現在性を否定するものと思われる。学説からは、法益の全般的保護の必要性という実質的理由が挙げられている。

 B 故意又は過失により自ら招いた危難から第三者の法益を守ろうとしている場合

 緊急避難を制限することは適当ではない。例えば、車を運転していて過失で横断歩道を歩行中の5人を轢きそうになり、これを避けるためには急ハンドルを切って歩道を歩いている1人にけがを負わせるしかない場合に5人の生命の保護を否定するのは不当である。

 C 故意又は過失により自ら招いた危難から自己の法益を守ろうとしている場合

 法益の要保護性が相対的に減少していると評価して、保全法益が侵害法益に優越している場合に限って違法性阻却を認める解釈が妥当である。

 なお、BCいずれの場合についても、緊急避難が認められて避難行為について違法性が阻却されたとしても、別途、緊急避難状況を招いたことについての過失犯の成立を問題にすることができる。

 

3 害の均衡

 一般的な標準を導き出すのは困難であり、具体的事例に応じて社会通念に従い法益の優劣を決すべきである。考慮要素として挙げられるのは、①保全法益の性質、保全法益に対する侵害の確実性・危険の内容、②侵害法益の性質、侵害法益に対する侵害の程度である。

 

4 過剰避難

 過剰避難の規定が、害の均衡を失した場合に認められることは明らかであるが、補充性が否定される場合にも認められるかについては、裁判例が分かれている。補充性が否定される場合には、①他の法益を侵害することなく避難が可能な場合 ②誰かに危険添加することが必要であったが、より侵害の大きい対象を選択してしまった場合 ③危難を避けるために当該法益を侵害することが必要であったが、必要以上に侵害してしまった場合 が考えられる。過剰防衛が正当防衛状況の存在を前提としているように、過剰避難も緊急避難状況にあることすなわち法益の衝突状況にあることを前提としている。このことを考えると②③の場合には過剰避難を認め得るが、①の場合には認め得ない。

 

以上を踏まえたりして冒頭の事例をどのように考えるか,各自で考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

旧司法試験・民法「抵当権の実行を巡る冒険」(平成9年度・第1問)

 

【問題】

 

 Aは,その所有する甲土地にBのために抵当権を設定して,その旨の登記をした後,Cに対し,甲土地を建物所有目的で期間を30年と定めて賃貸した。Cは,甲土地上に乙建物を建築し,乙建物にDのために抵当権を設定して,その旨の登記をした。その後,Cは,甲土地上の庭先に自家用車用のカーポート(屋根とその支柱だけから成り、コンクリートで土地に固定された駐車設備)を設置した。右の事案について,次の問に答えよ(なお,各問いは,独立した問いである。)。

 

1.Bの抵当権が実行され,Eが競落した場合,乙建物及びカーポートをめぐるEC間の法律関係

 

2.Dの抵当権が実行され,Fが競落した場合,乙建物及びカーポートをめぐるFA間の法律関係

 

 

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答案構成

 

 

【問題の整理】

 

カーポートは権限に基づき設置しているので,土地に附合しないと解するアプローチです(民法第242条但書き)。また,民事執行法借地借家法を丁寧にフォローしていくよう心がけて作成しています。ロジカルに書いていくと民法第370条の付加一体物は出てきません。民法第87条第2項で十分だからです。というのは,抵当権の効力が及んでいようがいまいが,実行の効力が従物たるカーポートに及ぶため。付加一体物というあいまいな概念に依拠する必要がなく,明確な条文の根拠に基づいており,争いの少なく手堅い論証となっていると思います。

 

 

【回答】

 

〔小問1 乙建物及びカーポートをめぐるEC間の関係〕

 

 EはCに対し,乙建物及びカーポートの収去並びに甲土地の明渡請求をすることが考えられる。

 

 

1.甲土地はもとA所有で,これに設定されたBの抵当権の実行により,Eに譲渡された(Eの代金納付時にEは所有権を取得(民事執行法第188条・第79条))。乙建物はCが建築したものであり,C所有である。カーポートについては,乙建物の常用に供するために,Cの所有に属するカーポートを乙建物に付属させたものであり,乙建物の従物である(民法第87条第1項)。また,カーポートはコンクリートで土地に固定されており,土地に符合するかが問題になるが,CはAにより設定された建物所有目的の賃借権により設置されたものであり,甲土地所有者であるAに帰属するものではなく,Cにその所有権が留保される(民法第242条但書き)。以上から,乙建物及びカーポート双方について,収去並びに土地明渡請求の請求原因が認められる。

 

Cの抗弁であるが,甲土地の賃借権が設定されたのはAのBに対する抵当権設定登記後なので,Cの賃借権の抗弁(民法第601条)は認められない(民事執行法第188条・第59条2項)。

 

よって、Eは建物収去・明渡しを請求できる。ただし、Cには6か月の猶予期間が認められる(民法第395条)。

 

 

2.なお、EはCが賃借しつづけることを望む場合には、Cの賃借権に対抗力を与えることができる(民法第387条1項)。

 

 

 

〔小問2 乙建物及びカーポートをめぐるFA間の法律関係〕

 

 AはFに対し,乙建物及びカーポートの収去並びに甲土地の明渡請求をすることが考えられる。

 

 

1.甲土地はA所有で,乙建物及びカーポートはC所有であったところ,これがFの競落によりF所有となっている。乙建物の抵当権実行の効力はその従物たるカーポートにも及び(民法第87条第2項),ともにF所有となる(民事執行法第188条・第79条)。以上から,乙建物及びカーポート双方について,収去並びに土地明渡請求の請求原因が認められる。

 

 

2.Fの抗弁であるが,乙建物及びカーポートの占有権原として,CのAに対する土地賃借権の設定及び当該賃借権の承継取得を主張することになる。CのAに対する土地賃借権の設定には争いはない。また,当該賃借権は乙建物の従たる権利であり,従物に準じ,主物・主たる権利たる乙建物の抵当権の実行によりFに移転する(民事執行法第188条・第79条,民法第87条第2項。判例結論同旨)。

 

Aの再抗弁であるが,当該賃借権の無断譲渡による解除を主張していくことになる(民法第612条第1項及び第2項)。

 

Fの再再抗弁であるが,譲渡を承諾しても土地所有者に不利益になる恐れがないにもかかわらず,承諾をしないような場合,裁判所は,承諾に代わる許可を与えることができ,裁判所が承諾に代わる許可を与えた場合には、賃借権を対抗できる(借地借家法20条,民法第612条第1項反対解釈)。

 

 

3.また,Fとしては上記とは別の抗弁として,借地借家法第14条に基づき,建物買取請求権を行使し,建物を時価で買い取るように請求し(形成権の行使となる。),乙建物及びその従物のカーポートがAの所有に帰し(民法第555条),建物及びカーポートの収去義務を免れることができる。また,この場合,Aとしては訴えを変更して建物明渡請求を予備的に請求していくことになるが(民事訴訟法第143条第1項本文),建物代金請求権を被保全債権として留置権を行使し,本件土地の明渡しを拒否することができると解される(民法第295条第1項本文)。また,Fとしては,乙建物及びカーポートの代金債権を訴訟内で請求し,引換給付の判決を求めることができる(判例)。

 

 

 

いかがでしょうか。法適用を厳密に積み重ねていくと,こうなるはずです。

一昔前の学者の好きな論点主義の答案とは一味もふた味も違うものになったのではないでしょうか。

 

 

 

 【参考】

 

我妻先生の本は本当にいい本です。

新訂 担保物権法 (民法講義 3)

新訂 担保物権法 (民法講義 3)

 

 

プライベート・エクイティ投資における長期安定的な成長計画の意義

 

エクイティ投資の一類型であるプライベートエクイティ投資は、当初「企業買収」という言葉に旧来のネガティブなイメージが付きまとい、また高い比率の議決権を取得することなどから、出資・株式取得提案を受けた企業が戸惑いと拒絶反応を見せる時期が長く続たが、現在では事業承継やエクイティファイナンス、再生資金調達のように企業側にとっても非常にメリットのあるツールとして認知されてきた状況にあ。今後の日本市場におけるプライベートエクイティ投資のリスクは何か、また企業価値の向上戦略において重要を考察する

 

 

目次

 

1.プライベートエクイティ投資の類型

(1)事業承継

(2)再生スポンサー投資

(3)PIPEsPrivate Investments in Public Equity

(4)アクティビスト投資

(5)スペシャルシチュエーション

2.プライベートエクイティ投資特有のリスク

 (1)ガバナンス体制の失敗

 (2)成長シナリオの策定ミス

  ①経営陣との綿密な検討

  ②実行計画を遂行していくうえで必要となるマネジメント体制、投資家サイドからのモニタリング要員の配置、それに伴う決裁権限規程の改定案策定 

  ③再生スポンサー投資や一時的な業績不振企業の収益計画

3.プライベート・エクイティ投資における長期安定的な成長計画の意義

 

 

 

 

1.プライベートエクイティ投資の類型

 

 

プライベートエクイティとは、現在では様々なタイプがあが基本的にはプライベートすなわち未公開・非上場株式への投資であり、34%あるいは50%超の議決権比率を確保することによって対象企業への経営関与を前提とした投資スタイルである。その経営関与の深度と方法も投資家によって様々が、ほとんどのケースで共通して取締役の派遣、モニタリング要員の対象会社への常駐を行い、株主への経営報告を定期的に行ってい。対象企業がプライベートエクイティ投資を受け入れた目的等によって投資スキームもいくつか使用されている。

 

 

(1)事業承継

 

対象企業の既存役職員が新たに株主となるマネジメントバイアウト(MBO)や実績のある第三者が社長・経営陣として招聘され出資も行うマネジメントバイイン(MBI)、再生の可能性がある企業に対して再生期間の運転資金や設備投資資金を提供する再生スポンサーなどがあ

 

 

(2)再生スポンサー投資

 

 

(3)PIPEsPrivate Investments in Public Equity

 

プライベートエクイティに類似した投資類型として、上場株式を上場維持のまま一定量取得又は増資引き受けを行い対象企業に対し友好的関係の下に関与する類型。

 

 

(4)アクティビスト投資

 

同じく上場株式を取得し中立的・敵対的立場から対象企業に対して重要提案を行う類型

 

 

(5)スペシャルシチュエーション

 

経営不振企業や一時的なクレジット不安に直面した企業に対しメザニン・優先株等によりファイナンスを提供する類型

 

 

以下では議決権の過半数を取得し、経営戦略に関与する投資タイプを前提に考察する

 

 

 

 

2.プライベートエクイティ投資特有のリスク

 

 

プライベートエクイティ投資特有のリスクとして、(1)ガバナンス体制の失敗,(2)成長シナリオ策定ミスが挙げられプライベートエクイティ投資における最大の特徴である議決権の取得と経営関与はその方法を誤ると逆に投資戦略遂行の足枷となる可能性があり、議決権の行使の方法と経営への関与の仕方においてはこの投資における最も繊細な運用が求められ

 

 

(1)ガバナンス体制の失敗

 

プライベートエクイティ投資における成功事例では、会社運営への直接的な口出しではなく、経営陣への宿題提示に留めた、というスタイルが多く見られ。特にエンドユーザー対応IT産業や製造業、小売業などへの経営関与はこの点に留意が必要とな。高度な技術を生産している製造業などでは研究開発部門、生産部門の現状と意向を踏まえたでの、経営陣と株主との念入りなコミュニケーションにより生産品質を維持させる必要がある

 

再生スポンサー投資では現任の経営陣に一定の経営責任が認められ、投資後も経営改善の責を担うには適当ではないと判断される場合、経営陣の大半を刷新し投資家の意向を汲み取った新たな経営陣が着任するケースがあ。ただし、同業や顧客からの信頼、事業推進のノウハウが現経営陣に集約されている場合などではその経営陣の続投の判断を慎重に行う必要があ。対象企業が事業を展開する業界で非常に重要な地位にあった経営者を解任したために、一気に顧客離れが生じたというケースもあ。持続可能な企業経営という観点からは経営者一人の信頼で企業が成り立っているという状態がそもそも問題ではないかという考え方もあが、近視眼的にはそういった経営者は一定期間経営を担うほうが適当という判断もでき

 

また、事業承継のように経営状況は良好である企業のオーナーの持分承継のみを目的とする場合は中立的株主として持分承継を円滑に進める点に投資後の運営の重点をおき、経営への積極関与はあまり行う必要がない。投資エクスポージャーに対して大きなダウンサイドが生じないかのチェックを行う程度のモニタリングを行。株主によるガバナンスの失敗で多く見られる例が、対象企業が長年蓄積してきた繊細な意思決定プロセスや営業方法を突然刷新してしまったために営業情報が停滞したり散逸して経営陣の状況把握が遅れるケースや顧客対応への影響により信頼を喪失してしまうケースである

 

 

 

(2)成長シナリオの策定ミス

 

上場株式の売買と異なり、未公開企業の株式を取得と売却では、取得価格も売却価格も適正な企業価値評価を前提に算出されることになプライベートエクイティ投資家が対象企業の株式取得価格算定や投資戦略を策定する際、取得価格を算出するのみであれば5年間程度の収益計画を立てることで対応できが、本来投資戦略の最もコアの部分はExit(売却)戦略であるとすれば、Exit時点からの将来収益計画を策定しておく必要があると考えられ。例えば投資期間が5年間であれば8年から10年間程度の収益予想若しくは、少なくとも市場動向見通しを分析しておく必要があそのうえで成長シナリオを策定する際には,下記の点に注意が必要である。

 

経営陣との綿密な検討

投資検討段階におけるフルDDの結果に沿って対象企業の機能、組織のうちどの部分に対してウォッチが必要なのか、どのようなマネジメントを行う必要があるのか、長期的な成長シナリオを描く上で必要な施策は何かを現経営陣と綿密な検討を行。何らかの改善や変更が必要な事項に対しては具体的なToDo(取り組むべき事項)をリスト化し担当者と実行期限を定め実行計画を策定す

 

②実行計画を遂行していくうえで必要となるマネジメント体制、投資家サイドからのモニタリング要員の配置、それに伴う決裁権限規程の改定案策定

モニタリング要員は経営陣へのガバナンス集約と指揮系統の統一化の観点からあくまでもモニタリングと現場における作業支援に特化し、対象企業の従業員に対して指示を出す立場ではないほうが好ましいと考えられ。株主に対する定期的な業績報告・経営報告は社長あるいは株主から派遣された取締役が行うことが通例。ここで株主サイドから出すリクエストや提案は経営陣への信任のもと、あくまでも長期的な企業価値の継続的成長に関わる事項のみに軸に据え、短期間で収束する問題や現場で解決すべき問題、月次レベルでの収益の増減に対してはウェートを置くべきではないと考えられ

 

③再生スポンサー投資や一時的な業績不振企業の収益計画

投資直後の2期程度を長期的成長軌道に対象企業を乗せるためのリストラ期間・体制作り期間と位置づけ、財務改善のためのトップラインの抑制あるいはコスト増を計画に織り込んでも売却価格にはほとんど影響しない場合も多くあ。また、新規のエクイティファイナンスを行わない前提であれば一定の資金制約のもとで達成可能な長期成長シナリオを策定しなくてはならない。このような失敗を避け、成功裏に投資を遂行させる為の企業価値戦略とはどのようなものなのか。投資後の企業価値戦略ガバナンス戦略投資後における円滑なガバナンス運営を目指すで、投資実行前からの経営体制に関する検討が非常に重要な業務とな

 

  

 

3.プライベート・エクイティ投資における長期安定的な成長計画の意義

 

 

プライベートエクイティ投資においては対象企業の中期事業計画の策定が最も重要な作業とな。中期事業計画は企業価値の向上施策や成長戦略が反映されたロードマップとして位置付けられ四半期又は半期に一度の頻度で実績と対比されExit戦略にフィードバックされ。多くの投資案件では投資実行後、対象企業の決裁権限規程において事業計画を株主総会への報告事項又は決議事項とされる。

 

特にコア事業の対象市場が今後成長するのか縮小するのかという点は企業の経営努力では抗し難いリスク要因であるため、入念で精緻な事前分析が求められ。周期性の強い市場を対象とする場合、コアシナリオ以外にも市場分析において予見される最もネガティブな状況に直面した場合を想定した保守的なシナリオも策定しておく必要があ

 

また、バリューチェーンや契約による製品の中長期的なオフテイク機能が整備されていない市場、資金回収期間が長期にわたる市場、レバレッジビジネスにおいては、売上高(資金回収)シナリオと資金繰りとの感応度分析を行っておくことが重要とな2008年に多く見られた住宅開発業者の過去最高益下の破綻は、売上高の成長を優先したことが資金回収遅延に対する資金繰の耐性を極めて虚弱にしていたことを示唆している。

 

Exitに向けた企業価値戦略投資期間中に企業価値を高めることに成功してもその後の継続的な成長性を対象企業に内生させなければExitの際、次の株主による評価は高まらない。継続的な成長性は次の株主が享受できる企業価値の向上を意味し、成長性の内生とは株主が交替しても企業価値に影響が無い状態にすることを意味する。例えば、企業価値の向上に多大な貢献を行った役職員が投資期間終了と共に会社を去る場合や、時限的に提供していた債務保証、顧客紹介、営業支援などが終了する場合も次の株主は敏感に評価に織り込

 

最後に世界のプライベートエクイティ投資家のパフォーマンスは短期的な計測期間ではオポチュニスティックな投資機会により高いリターンを残す場合も多いが、10年から30年といった長期間継続して安定したリターンを残している投資家には対象企業を中長期的な安定成長型企業に育成している、又はそのような企業に投資をしている投資スタイルが多く見られ。投資リターンと企業価値の安定継続性が表裏一体の関係にあるという意味では、結局は投資する側も投資される側も同じ利害を共有しているということができ

 

 

 

 

中期経営計画の具体的検討項目の事例

 

市場分析

資金分析事業ポートフォリオと事業別収益性検討

数値計画策定とセンシティビティ分析

・対象事業の市場見通し調査

・自社の市場内における位置付け確認

・ダウンサイドリスクの予見等

・現在の現金及び現金同等物ポジション確認

・各事業の設備投資等投資CF計画の確認

・各事業の収支構造分析による資金需要計測

・資金調達計画の検討等・実績

事業IRR

資金回転期間

リスク分析

市場における優位性などからコア事業選定

・資金・リスク・収益のバランスを保持したポートフォリオ構築

・対象市場のシナリオ分析

・株式市場(Valuation)のシナリオ分析

・各シナリオに応じたトップラインシナリオ

・トップラインシナリオと資金制約との整合確認

 

 

 

 

 

外国人に対する別異取扱いに関する憲法論

【問題】

 

 アパートの大家Yは,Xが外国人であるというだけの理由で同人からの入居申込みを断った。これに対しXは,Yによる契約の拒絶は憲法14条に違反するとして,Yに対して不法行為に基づく慰謝料請求訴訟を提起した。この訴訟における憲法上の争点につき論じよ。

 

 

【問題の整理】

 

 第1に,契約拒絶という私人間の事実行為に対して人権規定が適用されるとしてどのようにして私人間適用がなされるか。 

 

 第2に,本件外国人差別が14条1項後段に該当するとすれば,どのような厳格度で適用されるのか。

 

 

【解答】

 

 不法行為に基づく損害賠償請求の請求原因のうち,ここでは,「権利又は法律上保護される利益」の侵害があるかどうか,憲法解釈も踏まえて民法709条を解釈適用する必要がある。

 

 

1.判例

 

 三菱樹脂事件最判は,企業の側の契約締結の自由を強調し,「企業者が特定の思想信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも」当然に違法ではないとし,当該事案では,契約拒絶については拒否する私人の側の自由を重視した判断をしている。

 

 

2.民法憲法

 

 民法709条の権利利益の侵害となるかを判断するためには,具体的に本件の大家の行動は憲法上どのように評価され,その評価が民法の解釈適用にどのように反映するかを明らかにする必要がある。

 

 「国家からの自由」のみを念頭に置けば,私人間では人権規定の適用は否定され無効力説が妥当することになるが,公法と私法の区別をここまでカテゴリカルにやってしまうことには疑問が強い。むしろ個人の側からの自由の価値を直視し,公法・私法の最上位に位置する憲法の人権カタログを参照して私法である民法も解釈適用するのが当然と思われる。

 

 このことを確認するように,現行民法第1条第1項は,「私権は,公共の福祉に適合しなければならない」と規定している。契約拒絶の自由も私権の行使の一態様だが,やはりこれも公共の福祉(人権相互の矛盾衝突を調整する実質的衡平の原理)に適ったものかどうかを見なければいけない。

 

 

3.憲法第14条 

 

 それでは,外国人差別=国籍差別は,憲法上どのように評価されるか。憲法第14条の平等権の問題となるが,同条第1項後段列挙自由に該当する差別については権利又は法律上保護された利益の侵害に当たる。これは人のアイデンティティの根幹にかかわり,個人の人格の根源的平等にかかわる事由だからである。また,同項後段の「経済的,社会的関係」はまさにこのような契約交渉場面に該当する。

 

※もっとも,以上のような条文解釈のみでは不十分であり,三菱樹脂事件で示された判例法理を動揺させることはかなわない。条文解釈とともに,その解釈を支える実質的な理由,すなわち,私的自治の最低限の保障内容である契約拒絶の自由を制限できる実質的理由を十分に論証する必要がある。例えば,「国家は個人の人格の根源的平等を積極的に実現するため,既に存在する社会的偏見の除去や社会的偏見の萌芽となる差別的取扱いの除去を,その任務として負っている。アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)の許容や,人種差別撤廃条約の批准によりその任務は確証されている。」という補強理由が考えられる。

 

 

4.憲法第14条第1項後段列挙事由の考え方

 

 国籍を理由とする取扱いの区別は,憲法第14条第1項後段列挙事由に当たるか。

 

 この点は,国籍はその事由に当たらない。

 

 ただし,結局「根拠のある区別を行っているか」という実態判断をした時に,根拠がないような場合には,人種や社会的身分という法的には意味の持つべきではないレッテルにすぎないものに着目し,差別的意図で取扱いの区別をしており,権利侵害がある,という「合理的根拠」の有無の判断が実質的に先行すると考えられる。

 

在日朝鮮人に対する差別意識が垣間見える場合があったり,実質的に見た目や肌の色で差別する場合があるので要注意。

※逆に選挙がらみは国民主権との関係上,国籍での取扱いの区別に偏見の余地がない。

 

 

5.事案の具体的検討

 

 本件でも,賃貸借の継続的契約としての特性として,信頼関係の醸成が欠かせないものであること(自分の不動産の中に住まわせたり使用収益させたりするということは,財産権行使の態様としてはリスキーな類型であり,これには合理的理由がある),また,借地借家法制で賃借人が保護されていることからも,賃借人には誠実な人柄が望ましいと合理的に言える。また,債権回収の局面でも債務者たる賃借人の信用は重要である。

 

 外国人は,もともと本国に生活の本拠を有する場合が多く,また,生活スタイルや文化も異なる場合が多いことから,賃貸借関係を結ぶかどうかについて別途の考慮を有することは明らかである。

 

 しかし,問題のない外国人がむしろ大多数であり,そのことについては契約締結時に十分確認し,日本人と同じ基準で見て問題のない外国人とは契約を締結することが「公共の福祉」に適った民法解釈である。

 

 そのあたり,本件では「外国人という理由だけで」拒絶したとあり,確認を怠っており,まさに「外国人というレッテル」だけに着目し,人種や社会的身分に着目した合理的根拠のない差別と言わざるを得ない。よって平等権を侵害し,民法第709条の権利又は法律上保護される利益の侵害が認められる。

 

 憲法上の争点は以上である。

Brexitと,スウェーデンとEU

Swedish central banker worried over Brexit impact on Sweden | Reuters

 

 

イギリス同様ユーロに参加していないスウェーデンも今回のイギリスの様子をwatchしていたんじゃないかと思って調べてみたら,こんな記事がありました。

 

仕事でスウェーデンの会社と結構頻繁にやり取りをしていたことがあり,非常に勤勉な国民性とすぐれたビジネスセンスに,日本人と近いものを感じました。

 

上記とは別の記事ですが,このような分析も以前目にしました。

"In the case of Sweden, we are an ally in terms of our economic preferences. We are also another member state that is in the EU, and not in the euro. And Britain has always fought hard for the rights of non-euro states in the EU. Sweden benefits from that as well,"

イギリスは自国通貨主義のEU加盟国として,スウェーデンと利害を共通にしており,そのような自国通貨主義のEU加盟国の代表的存在として戦っていたと記事にはあります。また,今後イギリス離脱後は,スウェーデンに対するユーロ参加プレッシャーが高まるだろうとも。

 

ユーロに一度参加してしまえば最後,金融政策・財政政策ともに強烈な足かせとなります。ギリシャのおかげでユーロ安となり輸出で莫大な恩恵を受ける工業国ドイツがいる一方,適切な通貨水準にならないためいつまでたっても不況の国々がいるのがユーロの制度的帰結です。

 

(そのため各国が資金を出してユーロ参加国のうちの貧困国を援助するのでしょうが,それには常に援助する側の国民の不満との戦いが伴います。)

 

マイナス金利を導入しているスウェーデンが今からユーロに加盟することは,国内経済の混乱をもたらし,困難を極めると思います。

 

ポンドで頑張っているイギリスがEUから離脱を決定したことで,EU内でのスウェーデンの立場は弱くなってしまいそうです。

 

今度は財政悪化に苦しむイタリアなどの南欧諸国が国債(外債)のデフォルト危機を具体的に迎えれば,EU加盟国が自国通貨の発行に切り替えるという通貨ナショナリズムの機運が高まるかもしれません。

 

さらに,上記ユーロ圧力へのカウンター世論に加え,移民難民の問題でシェンゲン協定もうざくなってくれば,スウェーデンもEUから離脱する可能性が出てくると思います。(ドイツやフランスは全力で離脱を阻止するでしょうが。)

 

 

今後の動きを注視していきたいと思います。

 

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松下幸之助に学ぶ「事業」

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学校の勉強は金儲けには直接は役立ちません。

物を作り,売って,金を回収してビジネスは成り立ちます。

これができる人は思ったほど世の中には多くありません。

 

日本の士農工商はよくできた制度で,明治以降,

士→官僚・軍事

農→農業

工→製造業従事者・職人

商→経営者・資本家・販売

このような役割分担で日本の産業が発展する礎となったと考えています。

また,農・工・商の育成システムは学校ではなく奉公でした。

 

この古き良き日本のシステムを理解しながら,日本の経営者がどのように考え,行動し,試行錯誤しながらビジネスを作っていったかが手に取るようにわかる名著を紹介します。

 

私の行き方考え方 (PHP文庫 マ 5-5)

私の行き方考え方 (PHP文庫 マ 5-5)

 

 

下手なビジネス書よりはるかに良い本です。

 

新しいビジネスを作る時に考えなければいけないことは3つ。

① 何を売るか

② いくらで何個売るか

③ その個数を調達(又は製造)するためにいくら必要か

 

3Cとか4PとかSWOTなど高尚な理論は現実世界ではほとんど役に立ちません。MBAなんて行かなくてもいいです。簿記と財務三表分析と原価計算・固変分解・損益分岐点くらいがわかっていれば十分です。これも日々これらをツールとして使っていれば身につくのです。

 

マネタイズを忘れた日本のサラリーマンにはなかなか辿り着けない思考かもしれません。日本が長期に低迷している理由がわかるような気がします。

「東京五輪エンブレム問題」はなぜここまでこじれるのか

「五輪エンブレム問題」はなぜここまでこじれたのか? 法的論点を整理する | THE PAGE(ザ・ページ)

 

別にそこまで集中砲火しなくても良かったのでは?というのが自分の第一感。


まず,少なくとも日々ネットの恩恵を浴びている我々は彼を鬼の首をとったように批判する資格なしでしょう。(Youtubeをみたことがないという稀有な人は除きます。)


次に,少なくとも作者自身によるインターネットへのアップに関しては,実態としてオープンイノベーションのソースとすると考えるのが,実態にあっているのではないですか?


さらに,作品そのものの価値と,作者の人格やその作品をどのように作ったかは別に考えるべきです。薬物やアルコールの中毒状況下でよい音楽や絵画や小説を生み出していることも考えれば。


佐野氏自身をもう穢れてしまったものみたいに見て,やることなすこと否定するのは本当にやめたほうがいいです。

 

自分たちは,googleが作ってくれた匿名性で守られた安全なところから徹底的に"正義"を振りかざして悦に入っている。これで批判する人たちは自分たちも聖人君子でないことを認識すべきです。


もっとネットやマスコミのニュースでもプロとコンがあってほしいと思います。

 

ネットは本当に大衆の残酷な意識がでてきますね。