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経営を本業とし,その現場で毎日活動しています。このブログは,旧司法試験の問題を中心に,新たに実務的視点で考えてみるブログでしたが,最近は,ビジネス関連の雑考や法律・ビジネス関連の書籍紹介の記事が多くなっています。

改正民法で司法試験を考える② 差押え,解除,債権譲渡

本連載は,改正民法をベースに司法試験の問題を再検証することによって,改正民法の理解を深めるためのものです。第2回。差押え,解除,債権譲渡。

 

 

平成20年度旧司法試験第二次試験論文式試験問題 【民法

 

 Aは,工作機械(以下「本件機械」という。)をBに代金3000万円で売却して,引き渡した。この契約において,代金は後日支払われることとされていた。本件機械の引渡しを受けたBは,Cに対して,本件機械を期間1年,賃料月額100万円で賃貸し,引き渡した。この事案について,以下の問いに答えよ。 
1  その後,Bが代金を支払わないので,Aは,債務不履行を理由にBとの契約を解除した。この場合における,AC間の法律関係について論ぜよ。 
2  AがBとの契約を解除する前に,Bは,Cに対する契約当初から1年分の賃料債権をDに譲渡し,BはCに対し,確定日付ある証書によってその旨を通知していた。この場合において,AがBとの契約を解除したときの,AC間,CD間の各法律関係について論ぜよ。  

 

 

問題の整理

 

小問1について:AC間の法律関係について,法務省の出題趣旨を見ると,「小問1は,解除の効果と「第三者」(民法第545条第1項ただし書)の意義・要件,動産賃借権の対抗力の有無とその根拠,対抗力の有無から導かれる解除者と第三者との関係及び解除者が権利を主張するための要件などを論じさせ,基本的知識とその応用力を試すものである。」とあるが,経済的合理性から考えると,反対である。Cの手元で使用されている中古機械を,しかもC用にカスタマイズされている可能性があり市場価値がクエスチョナブルなものを取り戻す意味はなく,むしろ,Bの地位にAが置き換わりCから賃料を収受するほうが理にかなっている。(そうなるとAは契約解除をするまでもないが)

小問2について:小問1と異なり,BC間の賃料債権はDに譲渡されているので,Aは,賃料収受権者の地位に就くことができなく,次善の策として物の取戻し・転売処分により経済的損失を解消することを考えるであろう。ここで解除と第三者の論点に触れるのが合理的と考える。

 

 

答案

 

1.小問1について

AはBの債務不履行に基づく損害賠償請求権(売買代金相当額+遅延利息,民法第415条第1項本文・第2項第3号)を保全するためにBのCに対する本件工作機械の賃料債権(民法第601条)を差し押さえ,転付命令を取得することを試みることになる(民事執行法)。あるいはBの無資力を証明して,債権者代位権に基づき,Cに対する直接の賃料支払請求をすることになる(民法第423条第1項本文,第423条の3第1文)。

Cは本件工作機械の使用収益は阻害されておらず,Aからの請求に対する抗弁は,既弁済分についての弁済の抗弁(民法第473条,債権者代位の場合については民法第423条の4)以外にはないとみられ,Aの目的は上記請求により基本的には達成される。

なお,解除により復帰した所有権に基づく本件工作機械の返還請求も考えられるが,使用済みの物の返還によって得られる経済的利益より賃料債権請求の方が経済的利益の点で勝るため,ここでは検討しない。

 

2.小問2

(1)AC間の法律関係

Bがその賃料債権をDに譲渡していることにより,BのCに対する賃料債権はBの責任財産から逸出している(民法第466条第1項,BのDに対する将来債権譲渡の有効性につき同第466条の6第1項,確定日付ある証書による通知による第三者対抗要件具備につき同第467条,なお,同条第1項かっこ書き「現に発生していない債権の譲渡を含む」とされている点も参照)。

そこで,AはCに対しては,本件工作機械の取戻しを請求する方法に切り替えて経済的利益の回復を図るものと考えられる。

AのBに対する本件機械の売却により一旦移転した所有権(民法第176条)は,解除によりAに復帰する(民法第545条1項本文)。そして,Cは本件機械を占有しており,AのCに対する返還請求の請求原因事実は認められる。

Cは抗弁として,自己が民法第545条第1項ただし書きの「第三者」に当たることを主張することが考えられる。本条項の趣旨は,解除に伴い生じる法律関係の変動は対抗関係で処理すべきことを確認的に規定したものと解する。本件についてみると,Cは単に賃借人の地位であり,動産である本件機械の「譲渡」を受けた者ではない。民法178条は,「動産に関する物件の譲渡は,その動産の引渡しがなければ,第三者に対抗することができない」と規定しており,譲渡以外の場合は対抗関係に立たないことを規定している(民法第178条反対解釈)。よってCはAと対抗関係にすら立たず,Cの抗弁は認められない。

なお,CはAから占有を回収されることを条件に,BのCに対する使用収益させる債務の不履行に基づく損害賠償請求権(民法601条・第415条第1項本文・第2項第1号)を被担保債権として留置権を主張することが考えられるが,本条件は停止条件と解されるところ,CのAに対する留置権主張時には本損害賠償請求権は厳密にはその効力を生じておらず(民法第127条第1項),Cは留置権を主張すべき時にはまだ「債権を有」しておらず(民法295条本文),留置権の主張はできないと解する(なお,同条ただし書きの「その債権が弁済期にないとき」に該当するという解釈も可能で,留置権がないという結論は変わらない)。

 

(2)CD間の法律関係

DはCに対し,BC間の賃貸借契約に基づく賃料支払請求権を主張していくことになる。Cが引き続き使用収益できていればCが抗弁できるのは,Bに対してした弁済に基づく弁済の抗弁のみである(民法第468条第1項。なお,改正民法では意義をとどめない承諾の規定はなくなった)。

ここで,上記の通りAのCに対する本件工作機械の返還請求が認められ,Cが使用収益ができなくなった場合にも,CはDに対して賃料債務の返済をし続けなければならないか。この点に関しては,民法468条第1項では,「債務者〔C〕は,対抗要件具備までに譲渡人〔B〕に対して生じた事由〔弁済の抗弁・解除の抗弁等〕をもって譲受人〔D〕に対抗することができる」とあり,対抗要件具備「後」に生じたAによる占有回復によるCによる使用収益不能の事態はDに対抗できないと解されるようにも思われる(民法第468条第1項反対解釈)。しかし,Dが譲り受けたのは将来債権であり,Bの貸す債務の不履行に基づくBの解除(民法第545条第1項本文)や債務者主義危険負担(民法第536条第2項第1文)のリスクを引き受けているものと解するべきである。翻って考えてみると,Bの使用収益不能により,賃料債権も消滅するという「存続上の牽連関係」は,「対抗要件具備」までに譲渡人Bに生じていた事由であり,結局,民法468条第1項により,Bは民法536条第2項第1文による賃料債務の消滅の抗弁をDに対して行えると考えられる。

 

 

 

(出題趣旨・法務省

 

小問1は,解除の効果と「第三者」(民法第545条第1項ただし書)の意義・要件,動産賃借権の対抗力の有無とその根拠,対抗力の有無から導かれる解除者と第三者との関係及び解除者が権利を主張するための要件などを論じさせ,基本的知識とその応用力を試すものである。小問2は,債権譲渡の有効性と対抗要件に関する基礎的理解を前提としつつ,債権譲渡が小問1の帰結に影響を及ぼすか否かについて,前記「第三者」や民法第468条第2項の「事由」等との関係を検討させ,基本的知識に加え,論理的思考力及び判断能力を問うものである。

  

 

バフェットの経営哲学③ 財務戦略

本稿では,株主の役割と経営者がどう企業を経営し,どう株主に接するべきか,バークシャー・ハサウェイのケースをベースにして考察している。第3回。

 

 

財務戦略

 

財務戦略では株価への影響を意識しないことが重要である。配当や自社株買いなど財務戦略は株価に影響することが多いが,企業が株価を意識した行動を取れば,同様に株価を意識する投資家が近寄ってくる。価値ではなく価格を重視する株主が増えれば株主構成が悪化することになる。バークシャー・ハサウェイの財務戦略は非常に保守的だが,これは財務戦略を材料に短期的な投資をする投資家を近寄らせないことが理由の一つである。特に財務戦略は,意図せぬ誤解を生むことが多いため,一挙手一投足に気を配る必要がある。

 

バフェットは,自社の株主の一人一人が,自社が実現する一株当たりの内在価値の成長性と比例するリターンを株式保有期間に得て欲しいと考えている。これが実現するためには,自社の株式の内在価値と市場価値の関係が一定であることが必要となる。そのためバフェットは,自社の株価が高水準であることよりも公正な水準であることを望んでいる。自社の方針やコミュニケーションを通じて,株主が合理的な行動を取るように促進しており,こうした行動が結果的に株価も合理的にすることになる。このアプローチにより,他の株主の投資の失敗からではなく,会社の成長から利益を得ようとする長期的な株主を引き寄せる可能性が最大になる。

 

バフェットの財務戦略について特徴的なポイントの一つは株式分割に対する姿勢である。バフェットは株式分割に非常に否定的である。株式分割などの,事業価値ではなく株価に着目した行動を取れば,既存株主よりも質の低い買い手(新たな株主)を引き寄せることになる。分割で得をすると考えたり,分割を理由に株式に投資したりする投資家は,当社の現在の株主構成の質を確実に悪化させるとバフェットは考えている。バークシャー・ハザウェイはA種株式に関しては株式分割を行わず,その結果,株価は2006年には10万ドル,2014年には20万ドルを突破している。簡単に投資ができる株価水準ではないが,バフェットは株式分割がもたらす株主構成の質の悪化というマイナス面を重視している。株式分割により期待される流動性の改善に関しても非常に否定的であり,次のように述べている。「パートナー数人と共同で事業を行っている場合に,パートナーが共同事業から頻繁に退出することを望むならば,我々は落胆するだろう。上場企業を経営する際にも,我々は同じように考える。」

 

バフェットは株式の発行に対しても特徴的なアプローチをとる。バークシャー・ハザウェイは,1996年にB種株式という種類株を発行した。2010年1月に50分割されたため,現在では発行価格はA種株式の1500分の1,議決権は1万分の1となっている。種類株式の存在は,ガバナンスの面で望ましくないとされることが多く,バフェットも種類株式の影響は理解しているが,株式分割を回避して株主構成の質を維持するために種類株式を発行する決断をした。その背景には,同社の高水準の株価を逆に利用しようとするユニット型投資信託の販売の話が持ち上がっていたことがある。このユニット型投資信託が集めた資金がバークシャー・ハザウェイ社の株式に投資されれば,業績とは無関係に株価は一時的には上昇することになり,さらにそれにつられて信託に投資をする投資家が増えることになる。バフェットはユニット型投資信託の販売を阻止するために,(通常であれば,株式分割により株価を下げることを選ぶと思われるが,)種類株式の発行に踏み切った。この手法でも株主構成の悪化は避けられないので,さらに細心の注意を払ったのは,種類株式の発行(IPO)の仕組みであり,売り出しの規模をオープンエンド(上限がない形式)にすることにより,過小供給局面で生じる短期な価格上昇のチャンスをうかがうIPO投資家を近づけなかった。こうした工夫によりIPO直後のB種株式の出来高は,一般的な水準を大幅に下回る結果となった。

バフェットの経営哲学② 戦略の首尾一貫性/経営指標

本稿では,株主の役割と経営者がどう企業を経営し,どう株主に接するべきか,バークシャー・ハサウェイのケースをベースにして考察している。第2回。

 

 

戦略の首尾一貫性

 

ターゲットとなる投資家の自己選択により自社の株主になってもらうためには,彼らの判断をサポートする十分な材料を提供しなければならない。そこで重要となるのが,投資家から見た企業行動が首尾一貫しているかどうか,ということである。経営戦略と財務戦略の首尾一貫性がポイントとなる。

 

例えば,経営戦略は長期的な視点に立っているにもかかわらず,財務戦略が短期的なROE改善を重視していると投資家に判断されれば,経営戦略と財務戦略との一貫性が欠けてしまうことになる。これでは,短期的な経営を行う企業と判断して株主となる短期的な投資家が混在することになる。

 

実際,日本企業の最近の財務戦略を見る限り,短期的と判断されかねないケースが少なくない。

 

 

経営指標

 

企業が自ら設定する業績指標の目標を達成できているかどうかは投資家にとっては経営状況を判断するうえで有効な情報となる。ROEやEPSなどさまざまな財務指標が業績指標の目標として設定されるが,バフェットが目標設定において考慮しているのは,長期的な経営指標を業績指標として選定することである。バフェットは,一株当たりの内在価値の平均年間成長率を指標としている(この点の内容説明は他日を期したい)。これにより,長期的にキャッシュフローを改善することが経営上優先されることが投資家には理解できる。よって,長期投資家にとってはバークシャー・ハサウェイが投資対象の一社となる。

 

指標は事前に設定し変更しない,という点も重要である。これにより,業績という矢が刺さった場所を確認した後に,その周辺に標的を描こうとする衝動を抑えることができる。業績が悪化すると,多くの経営者は指標を捨てることを望む。目標として設定する業績指標は,長期的に企業価値を創造するためのカギとなるものでなければならないため,状況によって指標を変更することは不適切であり,一度選んだ指標は一貫して使い続けなればならない。

 

バフェットは,「株主の手紙」の最初のページに一株当たりの純資産(内在価値の算出は困難なため純資産で代用)とS&P500指数(配当含む)の年間変動率の時系列データを示しており,彼の業績指標実現への高いコミットメントが表れている。

改正民法で司法試験を考える① 詐害行使取消権

本シリーズは,改正民法で司法試験の問題を解いてみて,改正民法についての考察を深めるためのものです。第1回。詐害行為取消権,解除。

 

 

旧司法試験昭和63年度第2問

 

AB間でA所有の不動産をBに3000万円で売却する旨の契約が成立し、内金2000万円の支払後、残代金は一年後に支払う約束の下に、所有権移転登記及び引渡しが完了した。その後、Bは、事業に失敗し、その債権者Cに迫られて、唯一の資産である右不動産を代物弁済としてCに譲渡することを約束した。このため、Aは、Bから履行期に残代金の支払を受けることができなかった。

(一) 右の場合において、Cが所有権移転登記及び引渡しを受けていたときは、Aは、B及びCに対しどのような請求をすることができるか。

(二) AがBの債務不履行を理由として右売買契約を解除したが登記を回復しないでいる間に、BからCへの代物弁済の約束がされた場合はどうか。Cが所有権移転登記及び引渡しを受けている場合といずれも受けていない場合に分けて論ぜよ。

 

 

 

 

 

小問(一)について

 

1.AのBに対する請求

 

Aは、Bから履行期に残代金の支払を受けることができなかったことから,Bは履行遅滞民法412条第1項)。Aは売買代金債権残額1000万円の請求(民法第555条)及び損害賠償の請求(民法415条第1項前段)をすることができる。また、催告を行って解除の意思表示を行い(民法第541条本文,第540条第1項),原状回復のために,AからBに移転した不動産の返還請求権に基づく所有権移転登記の抹消登記請求を行うことができる(民法第545第1項本文)。

 

2.AのCに対する請求

 

(1)AはCに対し,解除による所有権の復帰を根拠に本件不動産の明渡しを請求を試みることが考えられるが,登記を備えた「第三者」Cに対しては解除は主張できない(民法第545条第1項ただし書き,なお,AとCが対抗関係に立つことにつき,第177条類推)。

 

(2)AはCに対し,Bへの代金債権及び損害賠償請求権という金銭債権を担保するために詐害行為取消権を行使することが考えられる(民法第424条以下)。代物弁済契約及びその履行に関しては「財産権を目的とする行為」(民法424条第2項反対解釈)といえる。また,本件代物弁済契約は被保全債権の発生であるAB間の売買契約の後になされている(民法424条第3項)。さらに,言うまでもなくAのBに対する売買代金債権及び損害賠償請求権は強制執行可能な債権であり被保全債権適格がある(民法第424条第4項反対解釈)。

では、代物弁済をすることが「債権者を害する行為」といえるかが問題となる。この点はAの請求の立て方により要件が変わる。

 

ア.BC間の代物弁済が債権額に比して過大な代物弁済でありかつその過大部分だけを取り消す場合

まず,請求の趣旨は過大な部分の取り消し+不動産の債務者への返還に代わる金銭賠償を,「A」に対して交付することを請求するということになると考えられる(民法第424条の4+424条第1項)。これは後述する弁済全部の取消しに比して要件が軽い(「債務者が債権者を害することを知ってした行為」であればよく,通謀不要である)。

なお,ここで金銭賠償となる理由は,民法第424条の4は「その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について」のみ「詐害行為取消請求をすることができる」とあるところ,代物弁済の目的は不動産であり不可分であることから,当該部分についてのみ取り出すことができないという意味で「受益者がその財産の返還をすることが困難であるとき」(民法第424条の6第1項後段)に該当すると解されるからである。

本件では,「BのCに対する債務額に比して本件不動産の額が過大であること」の認識があれば,「債務者が債権者を害することを知ってした行為」であるということができる(民法第424条第1項本文に該当)。ただし,Cが代物弁済契約当時においてAの債権の存在又は上記過大性の認識のいずれか又は両方に欠ける場合は,取消しを阻止することができる(請求に対する抗弁。民法第424条第1項ただし書き)。

なお,詐害行為取消しが認められた場合の法律効果については,まず取消しによってBC間の代物弁済及びその履行は無効となり,かつ,CはAに対しBから受領した金銭に相当する金額を,AのBに対する債権及びそれに付随する権利の限度に応じて支払う義務を負う(取消しの範囲につき,民法第424条の8第2項,債権者への支払につき,同第424条の9第2項)。以下は独自解釈であるが,AがCから金銭を受領した場合は,あくまでもAはBの財産の保全という「他人の事務」を行ったに過ぎないと解され(民法第697条第1項),当該金銭は事務管理に伴い代理で受領保全したBの財産であり,事務管理者たるAはBに当該金銭又はそれに相当する金額を返還する義務を負う(民法第701条・第646条第1項前段)。そして当該返還義務とAのBに対する売買代金債権は相殺敵状にあり,相殺により決済されることになろう(民法第505条第1項本文)。当該金銭又は当該金銭返還請求権を捉えてBの他の債権者が執行することはできないと解される(相殺が優先される。民法第511条第1項)。

 

イ.BC間の代物弁済が過大でも代物弁済契約全部の取消しを請求する場合,又は代物弁済が過大ではなく単に偏頗行為であるとして代物弁済契約の取消しを請求する場合

この場合は,民法第424条の特則である同第424条の3により要件が厳しくなり,支払不能及び通謀が要件となる。法律効果に関しては代物弁済行為の取消しは上記ア.の場合と同様だが,請求権に関しては,取消しの対象が代物弁済行為全部であるため,上記ア.の場合と異なり,不動産の所有権移転行為そのものが取り消され,当該不動産が債務者の所有に復帰し責任財産に編入され,Aは当該不動産を差し押さえ,民事執行法によりその売却金額から弁済を受けることができる。ただし,これは債権者平等の枠内で差押え又は配当要求をした全債権者の間で債権額に応じた按分弁済を受けるのみである(取消しの効力が債務者BのみならずBの他の債権者にも及ぶことにつき,民法第425条)。

 

 

小問ニについて

 

1.AのBに対する請求

 

AはBに対し,解除による原状回復請求、損害賠償請求をすることができる(民法第545条第3項)。Cに土地の引渡・登記移転がない場合は土地の返還(明渡し及び抹消登記請求又はそれに代わる移転登記請求)を請求することができる。Cに土地の引渡し及び移転登記がある場合にはA→Bへの所有権移転登記の抹消登記を請求できるのみである。ただ、物の返還と内金の返還は同時履行となる(民法第546条・第533条)。

 

2.AのCに対する請求

 

(1)Cが引渡し及び登記いずれも受けていない場合

 

AはCに対し,所有権確認請求を行うことが考えられるが,BC間の代物弁済契約により所有権の観念的移転は生じているため(代物弁済契約は諾成契約,民法第482条。さらに,意思表示のみによって原則として所有権は移転する,民法第176条),Cは解除により法的地位に影響を受け得る「第三者」であるから民法第545条第1項ただし書きにより,所有権の取得をAに主張できる地位が保証される。それにより,Aに対し「対抗要件の抗弁」を主張し,AのCに対する所有権の主張を阻止することができる(Bを起点とした二重譲渡と見ることになる。民法第177条類推)。AC間は対抗関係に立つので登記の先後で優劣を決す。Aが登記を具備しない限り,本件不動産の明渡しは請求できない。なお,移転登記請求も明渡請求も,そもそもCが登記及び引き渡しをいずれも受けていないので,請求することができない。

 

(2)Cが引渡し及び登記を受けている場合

 

上記同様対抗関係で優劣を決することになるところ,Cが登記を具備している以上Cに所有権が帰属していることが確定し,本件不動産の明渡し請求及び移転登記請求はできない。

 

なお,上記(1)(2)いずれの場合も,設問(一)の場合と同様の要件で,詐害行為取消権に基づき,金銭の支払い又は不動産移転登記の取消し及び不動産の返還を請求することができる。

ここで、原状回復請求権という特定債権を保全するために詐害行為取消権を行使することから,特定債権の保全のための債権者取消権が認められるかが問題になりうるが,被保全債権を特に金銭債権に限定するようには条文に書かれていないので認められると解する(民法第424条第1項参照)。

また,原状回復請求権を取得したのは詐害行為後であるが,原状回復請求権の基になっているのは代金債権であり同一性が認められ、代金債権は詐害行為前に取得しているから、詐害行為前に被保全債権を取得したといえ,詐害行為の前の原因に基づいて被保全債権が生じたといえる(民法第424条第3項)。

以上より,後は設問(一)と同様の要件を備えれば詐害行為取消権を行使できる。

そして、行使できる場合は,特定債権であるAのBに対する原状回復請求権を被保全債権として,BのCに対する不当利得返還請求権を被代位債権として,債権者代位により登記及び占有の取得を実現するか,過大部分の取消しであれば金銭賠償を実現することになる(ただしこの場合は設問(一)と異なり相殺により事実上の優先弁済を実現することはできない)。

もし原状回復請求権が社会通念上履行不能ということで損害賠償請求権に転化したという前提で,設問(一)と同様の場合分けで当該場合に応じた請求及び法的効果を実現することになる(過大部分の取消しのみであれば価格賠償,全部の取消しであれば不動産に対する強制執行)。

 

 

詐害行使取消権に関しては条文が整備されて要件・効果ともにとても明確になりました。条文操作による法解釈もしやすくなりました。

バフェットの経営哲学① 株主の在り方

本稿では,株主の役割と経営者がどう企業を経営し,どう株主に接するべきか,バークシャー・ハサウェイのケースをベースにして考察している。

 

 

株主の在り方

 

バフェットは次のように述べている。「当社(バークシャー・ハサウェイ)は,上場企業の母集団において,投資期間が最長である株主基盤を持っており,この特徴は今後も変わることはないはずだ。実際,当社の株式のほとんどは,死んでも保有していたいと思う株主が保有している。90%以上の株主は5年前から変わっていない。また,当社の株式の95%以上は,ポートフォリオにおいて当社の株式が最大の投資となる株主に保有されている。少なくとも数千人の株主が存在し,時価総額が10億ドルを超える企業の中で,株主がオーナーのように考え,行動するという点では当社はナンバーワンである。大株主であれ,少数株主であれ,株主が当社の経営哲学に共感してくれることは,素晴らしいことであり,また満足できることでもある。」

 

バフェットは株主は企業が選ぶべきものだと考えており,以下のようにして質の高い株主構成を構築してきた。

・求める株主像を明確にすること

・実際の経営や情報開示をすること

・自社の株主になるように自己選択を促すこと

 

株主は,価格が日々動き,経済的もしくは政治的な出来事により神経質になった時に売却する候補となる紙切れを保有しているに過ぎないと考えるべきではない。家族と共同で農場やアパートを保有しているのと同様に,永久に関与し続けたいと考える事業の一部を保有していると考えるべきである。

 

バフェットは,少なくとも5年以上の保有を推奨し,レバレッジを活用する短期的な投機家を拒絶する。長期的に企業価値を創造する自信がなければこのような主張はできない。長期的に優れた株価パフォーマンスを生むことを期待できない企業に長期的に投資する株主は存在しない。逆に短期的な株価パフォーマンスに関しては,市場の動向などの影響があるため企業価値の創造が即座に適正に株価に反映されることは保証されない。株主という共同出資者に損をさせないために,投資期間が短期間であれば投資をしないように警告をしているのである。

 

バフェットは,メディアやアナリストのレポートに基づき売買する投資家は自社に相応しい株主ではないと考えている。自身が理解できる事業に長期的投資をしたいという理由や事業が賛同できる方針に従っているという理由でバークシャー・ハサウェイに参画する「パートナー」を,株主として望んでいる。バフェット自身が実践しているように,投資家に対しても投資先についてしっかりと分析した後に投資をすることを求めている。

 

バフェットは,バークシャー・ハサウェイの経営にあたっては,方針,業績,コミュニケーションを通じ,自社の経営を理解し,時間軸を共有し,そして自己の評価と同様な評価をする株主を引き寄せる努力をしている。このような株主を継続的に引き寄せること(反対に,短期的で非現実的な期待を持った投資家にとっては興味がない会社であり続けること)ができていれば,企業の株式は事業価値に相応しい価格で持続的に取引されるはずである。経営戦略,財務戦略,IR戦略を通じ投資家は経営者の「本音」を見破る。自社の株主が短期的であるとすれば,自社の経営が短期的であることが原因であり,「自業自得」なのである。

 

バフェットが自社の株主に求めるのは,価格ではなく価値に注目する投資家。価値ではなく価格を重視するような投機家が株主を構成するようであれば,株価が根拠なく変動するだけでなく,企業が長期的な経営を実践することも困難になりかねない。長期株主の比率が高い株主構成を構築しようと考えるのであれば,企業は言葉だけではなく,長期的な経営にコミットする姿勢を実際に行動で示さなければならない。